地質調査報告書とは、ボーリング調査や標準貫入試験、室内土質試験で得られた結果を、設計や施工の判断に使える形にまとめた成果品のことです。どの調査をどれだけ行い、地盤がどう構成されていて、設計に使う数値をどう設定したのかが順を追って記載されています。この記事では、報告書の構成と読む順番、作成までの流れ、様式や書き方が何で決まるのかを整理します。
誰が何のために読むのか
同じ報告書でも、読む人によって必要な箇所は違います。最初にどこを開くかは、自分がどの立場で読むかで決まります。
- 設計者:基礎形式の判断に使う支持層の位置と、設計に用いる地盤定数
- 施工者:掘削のしやすさ、地下水位、施工時に注意が要る層
- 発注者:調査が仕様どおり行われたか、成果が要件を満たしているか
報告書は設計と施工の両方に引き継がれる資料なので、調査の時点では想定していなかった使われ方をすることもあります。読み手が後から根拠をたどれるかどうかが、資料としての価値を左右します。
第1〜5章に何が書かれているか
章立ては発注機関や案件によって変わりますが、おおむね次の順で構成されます。調査の事実を先に示し、そこから解釈へ進む流れです。
| 章 | 書かれている内容 | 読むときの着眼点 |
|---|---|---|
| 第1章 調査概要 | 業務の目的、調査位置、工期、調査数量 | 何のための調査か。数量が当初計画どおりか |
| 第2章 調査方法 | ボーリング、標準貫入試験、室内土質試験の内容と実施数 | どの試験をどこで行ったか。試験の種類で分かることが変わる |
| 第3章 調査結果 | 地形・地質の概要、各層の性状、N値、地下水位、試験結果 | 層の区分と、それぞれの土質・N値の分布 |
| 第4章 考察 | 層序の整理、地盤定数の設定、支持層の判断 | 定数をどの考え方で決めたか。根拠が書かれているか |
| 第5章 まとめ | 調査結果の総括、設計・施工上の留意点 | 設計に直接効く指摘がどこに書かれているか |
章立ては発注機関や業務の特記仕様書によって変わります。実際の構成は個別の仕様に従ってください。
本文のほかに、柱状図、地質断面図、試験結果の一覧、現場写真などが資料として綴じられます。数値の根拠は資料編にあることが多いため、本文と資料を行き来しながら読むことになります。
報告書はどこから読むか
先頭から順に読む必要はありません。実務では、次の4か所を押さえると全体像がつかめます。
支持層がどこにあるか
基礎形式の判断に直結するのが支持層の位置です。どの層を支持層とみなしたのか、その判断の根拠が第4章に書かれています。支持層とみなせるかどうかに一律の数値基準があるわけではなく、構造物の種類や適用する指針によって変わります。
N値と土質がどう対応しているか
N値は標準貫入試験で得られる値ですが、同じ値でも土質が違えば意味が変わります。砂質土か粘性土かをあわせて見ないと、地盤の締まり具合を読み違えます。柱状図では深さ方向の変化が追えるので、層の境界付近の値には特に注意が要ります。
地盤定数がどう設定されているか
地盤定数は、どの設計指針に沿って求めたかで値も根拠も変わります。数値そのものより、どの考え方で決めたのかが書かれているかを確認したほうが確実です。算出の過程が示されていれば、設計側で妥当性を検討できます。
地下水位がどこにあるか
地下水位は施工計画に直接効きます。掘削時の湧水や山留めの検討に関わるため、調査時点の水位と、季節変動の可能性についての記載を確認します。
報告書ができるまで
現地の作業が終わってから報告書が仕上がるまでには、いくつもの工程があります。
- 現地調査:ボーリング、標準貫入試験、サンプリング
- 室内土質試験:粒度、密度、含水比、一軸圧縮など
- データ整理:N値の換算、層の区分、試験結果の図表化
- 考察:層序の確定、地盤定数の設定、支持層の判断
- とりまとめ:本文の執筆、図表の作成、数量表の集計
調査全体の進み方は地質調査の流れにまとめています。1つの調査地点で複数孔を掘った場合は、孔ごとではなく地点として層を決めるため、層序対比の作業が入ります。
様式や書き方は何で決まるのか
報告書の体裁に全国共通の唯一の様式があるわけではありません。実務では次の3つが拠りどころになります。
- 発注機関の特記仕様書:その業務で何をどう記載するかを定めたもの。最優先で確認する
- 業界の標準的な手引き:全国地質調査業協会連合会が報告書作成マニュアルを刊行しており、記載事項の考え方が整理されている
- 電子納品の要領:成果を電子データで納める場合のファイル形式やフォルダ構成の決まり
電子データでの納品についてはボーリング調査の電子納品で扱っています。なお、様式の判断で迷った場合は、実際の特記仕様書と発注者の指示が優先します。
時間がかかるのはどの工程か
報告書づくりの工数は、考察に費やされているとは限りません。実際に時間を取られるのは、試験結果の転記、N値の換算、層ごとの集計、図表と数量表の組版といった、判断を伴わない作業です。技術者がここを抱えている限り、考察に使える時間は増えません。
サファリテックの地質調査AI「CAMEL」は、柱状図や室内土質試験のPDFを読み取り、N値の抽出から地盤定数の算出、第1〜5章のドラフト作成までを担います。自社での検証では、報告書の取りまとめが約50時間から約35時間になりました。読み取りの精度は概ね90%で、最終的な検証と判断は技術者が行う前提です。どこまで自動化できるかは地質調査報告書作成AIとはで詳しく整理しています。
- Q.地質調査報告書と地盤調査報告書は何が違いますか?
- A.明確な定義の違いがあるわけではありません。慣用として、地質調査報告書は土木構造物や建築物のためのボーリング調査の成果を指すことが多く、地盤調査報告書は戸建て住宅のスクリューウエイト貫入試験などの成果を指して使われることがあります。呼び方は発注者や業務によって変わるため、名称ではなく中身で判断してください。
- Q.報告書の様式やサンプルはどこで確認できますか?
- A.まずその業務の特記仕様書を確認してください。記載事項の考え方については、全国地質調査業協会連合会が報告書作成マニュアルを刊行しています。実例としては、自治体が委託業務の成果を公開している場合があり、章立てや図表の並びの参考になります。
- Q.報告書のどこを最初に見ればよいですか?
- A.立場によって変わります。設計であれば第4章の考察と支持層の判断、施工であれば地下水位と各層の性状です。数値の根拠を確認したい場合は、本文ではなく資料編の柱状図や試験結果の一覧を見ることになります。
- Q.報告書の作成にはどのくらい時間がかかりますか?
- A.調査規模や孔数によって大きく変わるため一概には言えません。参考として、当社が検証した案件では取りまとめに約50時間かかっていました。このうち転記や集計といった作業の比率が高く、そこを機械側に寄せると全体が短くなります。
Supervised by
監修:株式会社サファリテック 代表取締役 小林由快(北海道大学工学部卒。建設コンサルタント(日水コン)で土木設計・工事監理に従事した実務経験に基づき、内容を確認しています)
Related Product
CAMEL(地質調査サポートエージェント)
柱状図や土質試験のPDFを読み取り、N値の抽出から地盤定数の算出、報告書のドラフトと図表の作成までを支援するAIです。
- 柱状図・土質試験PDFの読み取り(精度は概ね90%・技術者の確認が前提)
- N値の換算と、地盤定数(γt・c・φ・E)の算出根拠つき出力
- 報告書 第1〜5章のドラフトと、N値分布図・断面図・柱状図綴りの作図
自社での検証では、報告書作成が約50時間から約35時間になりました。
実際の柱状図で試したい、費用感を知りたいといったご相談も承っています。
無料で相談する