地盤定数とは、基礎や構造物の設計に使う、地盤の力学的な性質を表す値の総称で、「土質定数」と呼ばれることもあります。国土交通省の河川砂防技術基準 調査編は、地盤の材料特性値を「土質分類、単位体積重量、変形係数、強度定数(粘着力、せん断抵抗角)、圧密に関する定数、透水係数、液状化に関する定数、動的変形特性等、土の要素としての特性を表す定数」と整理しています。設計で最もよく使うのは、内部摩擦角φ・粘着力c・変形係数E・単位体積重量γtの4つです。
求め方は、室内試験・原位置試験・N値からの換算の3つで、どれに拠るかで値が変わります。N値から換算する式そのものはN値から地盤定数を求める方法で扱います。
代表的な地盤定数4つは何を表すか
内部摩擦角φと粘着力cは土のせん断に対する強さ、変形係数Eは変形のしにくさ、単位体積重量γtは土の重さを表します。
内部摩擦角 φ
土がせん断されるときの、粒子どうしのかみ合わせや摩擦による抵抗の大きさを角度で表したものです。主に砂質土で支配的な強度定数で、支持力、土圧、斜面の安定の計算に使います。全国地質調査業協会連合会(全地連)の『地質と調査』159号 教養読本「土質試験」は、圧密排水(CD)条件の三軸圧縮試験で得られるモール円の接線の角度 φd がクーロンの摩擦係数と等価な物性値で、材料内部で発現することから「内部摩擦(内部摩擦角)」と呼ばれる、と説明しています。詳しくは「内部摩擦角とは」で解説しています。
粘着力 c
垂直応力がゼロでも発揮されるせん断抵抗で、主に粘性土で支配的な強度定数です。粘性土上に盛土を急速に施工するような「短期安定問題」では、非圧密非排水(UU)条件の非排水せん断強度 cu を使い、一軸圧縮試験から cu = qu/2 として推定できます。
圧密が進んで強度が増した後の検討には圧密非排水(CU)条件の値を、掘削に伴う「長期安定問題」には有効応力に基づく φ′ を使います。同じ「c・φ」でも、試験条件によって工学的な意味が変わる点に注意が要ります(教養読本)。
変形係数 E
荷重に対する地盤の変形のしにくさを表す値で、即時沈下の推定や地盤反力係数の設定に使います。一軸・三軸圧縮試験の応力〜ひずみ曲線から求める E50、孔内水平載荷試験や平板載荷試験から求める値、N値からの換算値があり、同じ地盤でも求め方で値が大きく変わります。建築基礎構造設計指針 第3版はN値からの換算式として E = 700N(kN/m²・孔内載荷相当)や、沖積砂質土で E = 1.4N、洪積砂質土で E = 2.8N(MN/m²)を示し、土質や堆積環境で相関が異なることを注記しています。
単位体積重量 γt
土の単位体積あたりの重さ(kN/m³)で、強さではなく「重さ」の定数です。有効応力(有効上載圧)、土圧、盛土荷重の計算に使います。室内では湿潤密度試験(JIS A 1225)で求め、試験データがない場合は土質別の標準値を使います。河川砂防技術基準 設計編は次の値を示し、土質試験データがあればその値で設計することが望ましい、としています。
| 地盤 | 土質 | 緩いもの | 密なもの |
|---|---|---|---|
| 自然地盤 | 砂及び砂礫 | 18 | 20 |
| 自然地盤 | 砂質土 | 17 | 19 |
| 自然地盤 | 粘性土 | 14 | 18 |
| 埋戻し土・盛土 | 砂及び砂礫 | 20 | 20 |
| 埋戻し土・盛土 | 砂質土 | 19 | 19 |
| 埋戻し土・盛土 | 粘性土 | 18 | 18 |
国土交通省『河川砂防技術基準 設計編』第1章 第7節 堰(2022年6月版)表7-5「土の単位体積重量(kN/m³)」。埋戻し土・盛土は緩い・密なの区別なく1つの値。地下水位以下にある土の単位体積重量は、表の値から 9 を差し引いた値としてよいとされています。堤防盛土材料が明確でない場合は一般に 18 kN/m³ を用います。
地盤定数はどう求めるのか:3つの経路
室内土質試験、原位置試験、標準貫入試験のN値からの換算という3つの経路で求めます。
第一は室内土質試験で、乱れの少ない試料を採って直接測ります。河川砂防技術基準 調査編は、力学試験の位置は地層の連続性や層厚を考えて決め、拘束圧や排水条件に合った試験条件を設定し、同一地層では代表的な位置で深さ方向に連続して行う、としています(土の性質は水平方向より深さ方向に変わるため)。主な試験と得られる定数は、この節の最後の表のとおりです。
第二は原位置試験で、孔内水平載荷試験・平板載荷試験(変形係数・地盤反力係数)、原位置ベーンせん断試験(主として粘着力)、PS検層(S波速度から動的変形特性)のように、地盤をその場で測ります。第三が標準貫入試験のN値からの換算で、同基準は「実測したN値から各種地盤定数を相関関係により求めることもできる」と位置づけています。
| 試験 | 得られる定数 |
|---|---|
| 土の粒度試験 | 粒径加積曲線、有効径 D10、均等係数 Uc、曲率係数 U′c |
| 土の含水比試験・土粒子の密度試験・湿潤密度試験 | 含水比 w、土粒子の密度 ρs、湿潤密度 ρt、乾燥密度 ρd、間隙比 e |
| 液性限界・塑性限界試験 | 液性限界 wL、塑性限界 wP、塑性指数 Ip |
| 土の一軸圧縮試験 | 非排水せん断強さ su、鋭敏比 St |
| 土の圧密試験 | 圧縮曲線、圧密降伏応力 pc、圧縮指数 Cc、体積圧縮係数 mv、圧密係数 cv |
| 土の三軸圧縮試験 | せん断抵抗角 φ′・φu・φcu・φd、粘着力 c′・cu・ccu・cd |
| 土の透水試験 | 透水係数 k |
河川砂防技術基準 調査編 第15章 第3節「主な土質試験」による。物理試験は同一性状と判断される層ごとに行い、力学試験は地層の連続性や層厚を考慮して位置を決めます。
N値から粘着力や内部摩擦角を推定するとき、何を確かめるか
すべての層で室内試験を行うわけではないので、実務ではN値からの推定が広く使われます。ただし換算式は経験式で、次の3点を確かめないと前提を外します。
- 土質:内部摩擦角の式は砂質土、粘着力の式は粘性土が前提。建築基礎構造設計指針は、大崎の式について当時の実験値にはかなりのばらつきが含まれていると述べている
- 補正N値:比較的新しい式は有効上載圧で補正した N₁ を使う前提で、浅い位置の下限(指針で σz′ ≧ 100 kN/m²、道路橋示方書で 50 kN/m² 未満は 50 とする)が決められている
- 拠る指針と版:同じ「道路橋示方書の式」でも版によって中身が変わる。対数の底が自然対数か常用対数かで、内部摩擦角が 8° 以上ずれる例もある
式ごとの違いは「N値から地盤定数を求める方法」、指針による違いは「設計指針で地盤定数の求め方は変わる」で解説しています。
3つの経路の結果は層ごとに突き合わせます。室内試験の粘着力とN値からの推定値が食い違えば、試料の乱れ、N値の補正、土質の読み違いのどれが原因かを確かめてから採用値を決めます。試験データは地盤の「点」の情報なので、その位置が地層の代表値になり得るか、頻度は足りているかも合わせて見ます(教養読本)。
地盤定数の整理を短くするには
N値の読み取り、層ごとの代表値の設定、換算式の適用、室内試験結果との突き合わせは、深度・層ごとに同じ作業を繰り返します。サファリテックの地質調査AI「CAMEL」は、柱状図のN値と室内土質試験の成績表を読み取り、設計指針を選んで地盤定数(γt・c・φ・E 等)を根拠つきで算出し、地盤定数一覧表をExcelで出力します。技術者は換算の妥当性と地盤条件の判断に時間を使えます。詳しくはサービス資料をご覧ください。
- Q.地盤定数とは何ですか?
- A.基礎や構造物の設計に使う、地盤の力学的な性質を表す値の総称です。代表的なものに内部摩擦角φ、粘着力c、変形係数E、単位体積重量γtがあり、ほかに圧密に関する定数、透水係数、液状化に関する定数なども含まれます。
- Q.地盤定数はどうやって求めますか?
- A.室内土質試験(三軸圧縮・一軸圧縮・圧密・湿潤密度など)で直接求める方法、原位置試験(孔内水平載荷・ベーンせん断・PS検層など)で測る方法、標準貫入試験のN値から相関式で推定する方法の3つがあり、層ごとに突き合わせて採用値を決めます。
- Q.内部摩擦角と粘着力はどちらを使いますか?
- A.砂質土では内部摩擦角φが、粘性土では粘着力cが支配的です。粘性土でも短期の安定検討では非排水せん断強度cu、長期の検討では有効応力に基づくφ′を使うなど、試験条件によって使う定数が変わります。
- Q.単位体積重量はいくつを使えばよいですか?
- A.湿潤密度試験の結果があればその値を使います。無い場合、河川砂防技術基準 設計編は自然地盤の砂及び砂礫で 18〜20、砂質土で 17〜19、粘性土で 14〜18 kN/m³ を一般的な値として示しています。地下水位以下は 9 を差し引いた値としてよいとされています。
- Q.N値からの推定はそのまま使えますか?
- A.あくまで目安です。土質、補正N値の要否と下限、拠る指針の式と版を確認したうえで、室内試験や原位置試験の結果と突き合わせて採用します。
参考文献
- 1.国土交通省『河川砂防技術基準 調査編』(2014年4月版)第15章 第3節 河川構造物の土質・地質調査(サウンディング試験、載荷試験、土質試験、結果のまとめ)
- 2.国土交通省『河川砂防技術基準 設計編』第1章 第7節 堰(2022年6月版)表7-5 土の単位体積重量
- 3.全国地質調査業協会連合会『地質と調査』2022年第1号(通巻159号)教養読本「土質試験」2-2 力学試験(一軸圧縮試験・三軸圧縮試験の UU・CU・CD 条件)
- 4.日本建築学会『建築基礎構造設計指針』第3版(2019年11月)2.7節 地盤定数 p.30、pp.32-33
- 5.日本道路協会『道路橋示方書・同解説 Ⅳ下部構造編』(令和7年版(2025年))参考資料1
- 6.日本産業標準調査会『JIS A 1225:2020 土の湿潤密度試験方法』

この記事の監修
小林 由快株式会社サファリテック 代表取締役
北海道大学工学部卒。建設コンサルタントの株式会社日水コンで、土木設計と工事監理に従事。リクルートからの業務委託で新規事業開発も経験。現在はサファリテックの代表取締役として、建設・土木向けAIプロダクトの開発を率いている。
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