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地質調査DX2026.07.13

N値から地盤定数を求める方法|砂質土・粘性土の換算式と注意点

N値から地盤定数を求める換算式は複数あり、同じN値でも採用する式によって推定値が変わります。代表的な式を一覧で整理し、用途による使い分けと適用の限界を実務目線でまとめました。

地質調査報告書の作成では、標準貫入試験で得られたN値をもとに、内部摩擦角や粘着力、変形係数といった地盤定数を推定する工程が欠かせません。本記事では代表的な換算式を一覧で整理します。ただし先に押さえておきたいのは、これらの式は経験式であり、同じN値でも採用する式によって推定値が変わるという点です。式を知ることと、その式を使ってよい場面を判断できることは別物です。

N値から求められる地盤定数

求めたい値砂質土粘性土
内部摩擦角 φ主にこれを推定する通常は用いない
粘着力 c一般に c=0 と仮定する主にこれを推定する
変形係数 E推定できるがばらつきが大きいN値4以下は相関がほぼない
単位体積重量 γt土質とN値の区分から標準値を用いる同左

砂質土では一般に粘着力 c=0 と仮定して、N値から内部摩擦角を推定します。同じN値でも、土質によって読み取るべき地盤定数が異なります。

砂質土:内部摩擦角φを求める式

N値からせん断抵抗角(内部摩擦角)を推定する式は複数あり、基準・指針ごとに異なります。関東地質調査業協会 技術委員会が全地連の技術フォーラムで発表した技術資料では、代表的な式が次のように整理されています。

出典・通称補正N値
φ = √(12N) + 15 / + 20 / + 25(土粒子の形状と粒度の組み合わせで加える数が変わる)ダナム(Dunham)の式使わない
φ = 0.3N + 27Peckの式使わない
φ = √(20N) + 15大崎の式使わない
φd = √(20N₁) + 20(3.5≦N₁≦20)/ φd = 40(N₁>20)建築基礎構造設計指針(2019)N₁ = N/(σv′/100)^0.5
φ = 4.8 log N₁ + 21(N>5)道路橋示方書・同解説 下部構造編(H29.8)N₁ = 170N/(σv′ + 70)
φ = 25 + 3.2√(100N/(70+σv′))港湾の施設の技術上の基準(平成30年)式に含む
φ = 1.85[N/(0.01σv′ + 0.7)]^0.6 + 26鉄道構造物等設計基準(平成12年6月)式に含む

σv′ は有効上載圧(kN/m²)。出典:関東地質調査業協会 技術委員会「N値に関する物性値換算の問題と適応性の限界について」(全地連 技術フォーラム2020)。同資料は地盤工学会「地盤調査の方法と解説」等を引用元としています。なお、ダナムの式で粒子形状と粒度の組み合わせに対して +15・+20・+25 のどれを当てるかは、資料によって区分の書き方が異なります。実際に採用する際は、拠る基準の原典で確認してください。

補正N値を使う式と、使わない式がある

上の表で分かれ目になるのが補正N値です。ダナム・Peck・大崎の式は相関研究の初期に提案されたもので、有効上載圧を考慮していません。一方、建築基礎構造設計指針や道路橋示方書などの新しい式は、深さ方向の応力の影響を補正したN₁値を用います。同じ地盤でも浅い層と深い層ではN値の意味が変わるため、どちらの系統の式なのかを意識せずに数値だけ引用すると、前提を外します。

構造物の種類によって、使う式が違う

実務では、対象とする構造物によって採用される式が異なります。たとえば農林水産省の土地改良事業設計指針「耐震設計」では、水路構造物には大崎の式、橋台や橋脚には道路橋示方書の式が用いられる場合が多いとされています。ただしここでいう道路橋示方書の式は φ = √(15N) + 15(≦45°、N>5)で、上の表に挙げた平成29年版の φ = 4.8 log N₁ + 21 とは別の式です。同じ「道路橋示方書の式」という呼び方でも、拠る版によって中身が変わります。まず自分が扱う構造物の基準を確認し、そこで指定されている式と版に合わせるのが出発点です。どの指針に拠るかで値も根拠も変わる点は、設計指針で地盤定数の求め方は変わるで整理しています。

同じN値でも、式によって推定値が変わる

  • ダナムの式は、粒子の形状と粒度の組み合わせだけで最大10°の差が出る
  • N値が5未満の範囲では、式による推定値の差が大きい
  • ダナムの式を除いて比べると、N値20付近で式による差が最も大きくなる

つまり「N値20だからφは○°」と一意に決まるわけではありません。前掲の関東地質調査業協会の資料でも、推定式のみで軟弱地盤上の盛土の安定を検討した場合、同じN値でも採用する式の違いによって対策の要否が変わるケースがあると指摘されています。

粘性土:粘着力cを求める式

粘性土では、N値からまず一軸圧縮強さ qu を推定し、そこから粘着力を導きます。実務では c = qu / 2 として扱うのが一般的です。qu の推定式も複数あります。

式(kN/m²)出典
qu = 50N土質工学ハンドブック(1982)
qu = 25N米国海軍省 DESIGN MANUAL 7
qu = 17NPeck(シカゴ粘土)
qu = 15N米国海軍省 DESIGN MANUAL 7
qu = 12.5NTerzaghi and Peck(地盤調査の方法と解説)
qu = 7.5N米国海軍省 DESIGN MANUAL 7
qu = 40 + 5N大崎(1959)東京地盤図

出典は前掲の関東地質調査業協会の資料。式の選び方によって、一軸圧縮強さの推定値には最大6.7倍の差が生じます(qu=50N と qu=7.5N の比較)。N値が小さい範囲でこれらの式をそのまま採用することは、実務上の大きな問題になり得ると指摘されています。

N値とコンシステンシーの対応

コンシステンシーN値qu(kN/m²)
非常に軟らかい2未満0〜24.5
軟らかい2〜424.5〜49.1
普通の4〜849.1〜98.1
硬い8〜1598.1〜196.2
非常に硬い15〜30196.2〜392.4
固結した30超392.4超

Terzaghi and Peck による区分。なお qu = 12.5N の式は、この「範囲のある対応」を範囲の中央値で定式化したものであり、定式化の段階で誤差を含みます。

変形係数Eの目安と、その限界

変形係数についても複数の相関式が提案されています。孔内載荷試験に基づく式としては E = 670N^0.986(kN/m²、土屋・豊岡 1980)などがあり、建築基礎構造設計指針(2019)では平板載荷試験・フーチングをもとに、正規圧密で地下水面下なら E = 0.7N、過圧密なら E = 2.8N、過圧密の再載荷なら E = 5.6N(いずれもMN/m²)といった区分が示されています。変形係数を推定ではなく実測で求める方法としては、孔内水平載荷試験(LLT)があります。

ただし変形係数の推定は、ばらつきがとくに大きい領域です。N値5で E ≒ 800〜10,000 kN/m²、N値10で E ≒ 1,500〜20,000 kN/m² と、約10倍の幅があると報告されています。加えて、吉中(1967)は粘性土への換算式の適用は不適であると述べており、日本建築学会もN値4以下の粘性土についてはN値との相関が事実上ないとしています。

砂質土と粘性土で考え方が変わる理由

砂質土の場合

砂質土では、N値は主に締まり具合(相対密度)や内部摩擦角と結び付けて考えます。粒子のかみ合わせで強さが決まる土であり、N値が大きいほど締まった地盤とみなせます。

粘性土の場合

粘性土では、N値は粘着力やコンシステンシー(硬さ・軟らかさ)の目安として扱います。含水比や過圧密の影響を受けやすく、N値だけで判断すると実態とずれることがあるため、可能であれば室内土質試験の結果と併せて確認するのが望ましい土質です。せん断強さを直接調べるなら三軸圧縮試験、沈下の検討が要るなら圧密試験が該当します。同じN値でも土質によって読み取るべき地盤定数が異なるため、まず土質を正しく把握することが出発点になります。

換算を使うときの注意点

  • 相関式は経験式であり、ばらつきと誤差を必ず含む
  • 相関式は複数あり、採用する式によって推定値が異なる
  • 相関の基データには地域性がある(東京区部のデータに基づく式など、限定的なものがある)
  • 地下水位やロッド長、上載圧などの影響で、実測N値の補正が必要な場合がある
  • 一点の値に引きずられず、層全体の傾向として深度方向のばらつきを扱う
  • N値そのものにも、装置の状態や実施手順による誤差が含まれている

前掲の関東地質調査業協会の資料は、地質技術者が地盤定数を検討する際には、相関式の適用限界と適正なN値の利用範囲を理解したうえで、室内試験や原位置試験の結果を踏まえて設定することが重要だと結論づけています。換算値だけで地盤定数を決めることは、大きなリスクを含みます。これらはいずれも、式に数字を入れるだけでは解けない技術者の判断です。だからこそ、判断以外の定型作業をいかに軽くするかが、業務効率化の鍵になります。

定型作業はAIで、判断は技術者で

N値から地盤定数を求める工程には、柱状図からN値を読み取る、転記する、層ごとに整理する、定型的な計算をする、といった時間はかかるが判断を伴わない作業が多く含まれます。サファリテックの地質調査AI「CAMEL」は、柱状図・土質試験のPDFを読み取り、N値の抽出から地盤定数の定型的な算出、報告書(Excel・Word)の作成までを自動化します。地盤定数(γt・c・φ・E など)は算出根拠まで提示され、ワンクリックで修正できるため、技術者は換算の妥当性や地盤条件の判断に集中できます。たとえばN値整理から単位体積重量の算出までは、従来の半日〜1日から15〜30分程度に短縮できます。

N値からの換算は設計を効率化する有効な手段ですが、あくまで目安であり、土質ごとの考え方と注意点をふまえた技術者の判断が欠かせません。判断を伴わない定型作業をAIで自動化することで、限られた時間を本当に必要な検討に振り向けられます。

Q.N値から内部摩擦角を求める式はどれを使えばよいですか?
A.対象とする構造物の設計基準で指定されている式に、その版まで含めて合わせるのが基本です。たとえば農林水産省の土地改良事業設計指針「耐震設計」では、水路構造物に大崎の式、橋台や橋脚に道路橋示方書の式(φ = √(15N) + 15)が用いられる場合が多いとされています。式を自由に選べる場面は実務ではほとんどありません。
Q.大崎の式は掛け算と足し算のどちらですか?
A.φ = √(20N) + 15 です。N値に20を掛けた値の平方根に15を加えます。ウェブ上では √(20+N) と足し算で記載されている例も見られますが、関東地質調査業協会の技術資料や農林水産省の土地改良事業設計指針をはじめとする出典では、掛け算の形で示されています。
Q.N値だけで地盤定数は決められますか?
A.決められません。相関式は経験式であり、採用する式によって推定値が変わります。変形係数では約10倍、一軸圧縮強さでは最大6.7倍の差が生じることもあります。室内試験や原位置試験の結果を踏まえて設定することが推奨されています。
Q.砂質土と粘性土で扱いはどう変わりますか?
A.砂質土は主に内部摩擦角や相対密度、粘性土は粘着力やコンシステンシーと結び付けて考えます。砂質土では一般に粘着力 c=0 と仮定します。同じN値でも土質によって意味合いが異なります。
Q.補正N値(N₁)とは何ですか?
A.有効上載圧の影響を取り除くために補正したN値です。同じ締まり具合の地盤でも、深い位置ほどN値は大きく出ます。建築基礎構造設計指針や道路橋示方書などの比較的新しい式は、この補正N値を用いる前提で作られています。
Q.CAMELは地盤定数の算出まで自動化できますか?
A.柱状図からのN値抽出と、地盤定数の定型的な算出まで自動化できます。算出根拠を提示する設計のため、どの式でどう計算したかを確認できます。最終的な妥当性は技術者が確認する前提です。

Supervised by

監修:株式会社サファリテック 代表取締役 小林由快(北海道大学工学部卒。建設コンサルタント(日水コン)で土木設計・工事監理に従事した実務経験に基づき、内容を確認しています)

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