ボーリングデータの電子納品とは、ボーリング調査の成果を国土交通省の「地質・土質調査成果電子納品要領」に沿った電子データで納めることです。ボーリング1孔につき、ボーリング交換用データ(XML)・電子柱状図(PDF)・電子簡略柱状図(CAD)の3種類を、決められたフォルダとファイル名で格納します。以下、要領の令和8年2月版に沿って、フォルダ構成・成果品の違い・改定点・つまずきやすい点の順に見ていきます。
電子納品は何に基づき、どこまでが対象か
地質・土質調査共通仕様書(案)は「電子納品」を電子成果品を納品することと定義し、受注者は電子納品要領に基づいて作成した電子データで成果物を提出するよう定めています(第118条)。要領に記載のない項目は監督職員と協議して決め、電子納品に対応するための措置は「電子納品運用ガイドライン【地質・土質調査編】」によります。
電子化の対象は、報告文、ボーリング柱状図、地質平面図、地質断面図、ボーリングコア写真、土質試験及び地盤調査、現場写真、その他の地質・土質調査成果の8つです。報告文は「土木設計業務等の電子納品要領」、現場写真は「デジタル写真管理情報基準」に従い、残りの6つをこの要領が定めます。要領は7編構成で、ボーリングデータに直接関わるのは第1編(一般)・第2編(ボーリング柱状図)・第5編(コア写真)・第6編(土質試験及び地盤調査)です。
柱状図の様式そのものは要領ではなく、全国地質調査業協会連合会(全地連)の「ボーリング柱状図作成及びボーリングコア取扱い・保管要領(案)・同解説」によります。土質名や地質のコードはJIS A 0204・0205・0206、土質試験のデータシート様式は地盤工学会の「地盤材料試験の方法と解説」「地盤調査の方法と解説」によります。電子納品要領は、これらで作った成果を「電子データとしてどう格納するか」を決めた文書です。
BORINGフォルダには何を入れるのか
ボーリング交換用データ、電子柱状図、電子簡略柱状図、コア写真、土質試験の成果、その他の成果を、6つのサブフォルダに分けて入れます。
電子成果品はすべて「BORING」フォルダの下にまとめます(第1編 4)。直下に地質情報管理ファイル(BORING.XML)とその構造を定義するDTDファイルを置き、6つのサブフォルダの中身は次の表のとおりです。
| サブフォルダ | 格納するもの | ファイル名 | 定める編 |
|---|---|---|---|
| DATA | ボーリング交換用データ(XML)とそのDTD | BEDNNNN.XML、BED0500.DTD | 第2編 |
| LOG | 電子柱状図(PDF) | BRGNNNN.PDF | 第2編 |
| DRA | 電子簡略柱状図(CAD) | BRGNNNN.P21 または .P2Z | 第2編 |
| PIC | ボーリングコア写真と管理ファイル | CNNNNMMM.JPG、COREPIC.XML | 第5編 |
| TEST | 土質試験及び地盤調査の成果と管理ファイル | GRNDTST.XML、STBNNNN.PDF/.XML、TSNNNMMM.PDF など | 第6編 |
| OTHRS | その他の地質・土質調査成果と管理ファイル | OTHRFLS.XML ほか任意 | 第7編 |
地質・土質調査成果電子納品要領(令和8年(2026年)2月)第1編 4 フォルダ構成、第2編 3、第5編 3、第6編 3、第7編 2 による。NNNNはボーリング連番、MMM・NNNは写真・試料・試験の番号。
TESTフォルダはもう1段深くなります。試験を行った孔ごと、または孔を使わないサイトごとにサブフォルダを作り(当該調査の孔は BRGNNNN、既設孔は BRGNNNNA、サイトは SITNNNN)、その中に試験ごとの電子データシートとデータシート交換用データ、「TESTPIC」フォルダに供試体写真を入れます(第6編 3)。孔数と試験数が多い案件ほど、この階層とファイル名の整合を人手で保つのが負担になります。
管理ファイル(BORING.XML・COREPIC.XML・GRNDTST.XML・OTHRFLS.XML)は、サブフォルダの電子データを検索・参照・再利用するための最低限の管理情報を書いたXMLです。地質情報管理ファイルには、ボーリング名・連番・柱状図区分(岩盤、土質(オールコア用)、土質(標準貫入試験用)、地すべり(オールコア用)、地すべり(標準貫入試験用)、その他)と、3つの成果品それぞれを作ったソフトウェア名をバージョン込みで記入します(第2編 表4-1)。適用した要領の版は「土木202602-01」のように記入します。
XML・PDF・CADの3つは何が違うのか
XMLはデータベース化やデータ交換に使うデータ、PDFは画面で読む柱状図、CADは断面図に使う簡略柱状図です。
ボーリング柱状図の電子成果品は3種類で、要領は名称の混乱を避けるために名前を固定しています(第2編 表2-1)。ひと言でいえば、XMLは機械が読むデータ、PDFは人が読む図面、CADは断面図に貼る部品です。
| 成果品 | 形式 | 目的 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ボーリング交換用データ | XML | ボーリングデータのデータベース化、受発注者間・受注者間のデータ交換 | 全地連要領の各様式を再現できる。データフォーマットに対応したソフトウェアで作成する |
| 電子柱状図 | 全地連要領の様式による柱状図の電子化 | 特別なソフトを使わずブラウザ等で表示できる。埋め込まれたデータを取り出して再利用することはできない | |
| 電子簡略柱状図 | SXF(P21 または P2Z) | 調査・設計段階での断面図作成支援(CADによる切り貼り) | 様式を定めた規格・基準類がないため要領を参考にする |
地質・土質調査成果電子納品要領・同解説(令和8年(2026年)2月)第2編 表2-1・表2-2 による。
ボーリング交換用データ(XML)とは
柱状図に書かれる情報を項目ごとに分けて記入したXMLファイルです。基礎情報(様式0)、標題情報(様式A)、工学的地質区分名・現場土質名(様式B)から、試料採取(様式L)、地盤材料の工学的分類(様式N)まで、様式ごとに必要項目を記入します(第2編 5-1)。ファイル名は BEDNNNN.XML、DTDは BED0500.DTD で、末尾の0500はDTDのバージョン5.00を表します。過去の柱状図XMLを扱うときは、このDTDバージョンが版によって違う点に注意が要ります。
国や自治体が公開している地盤情報データベースの柱状図は、このXMLが元になっています。共通仕様書(案)第118条は、機械ボーリングの柱状図と土質試験結果一覧表を、第三者機関の検定を受けたうえで発注者が指定する地盤情報データベースに登録するよう受注者に求めています。電子納品は、公開データの入口でもあります。
電子柱状図(PDF)と電子簡略柱状図(SXF)
電子柱状図は、全地連要領の岩盤ボーリング柱状図、土質ボーリング柱状図(オールコアボーリング用・標準貫入試験用)、地すべりボーリング柱状図(同)の5様式が基本で、削孔方向の尺度は1:100、用紙はA3縦が基本です(第2編 6-4、6-5)。標準貫入試験のN値や土質、孔内水位を人が読むのはこのPDFです。
電子簡略柱状図は、設計図面に切り貼りして地質断面図を作るためのCADデータです。形式はSXF(P21またはP2Z)、尺度1:100、用紙はA4縦が基本で、削孔長の長いボーリングはこの限りではありません。ボーリング名・孔口標高・総削孔長と、標尺、工学的地質区分名または現場土質名(模様)は必ず表示し、緯度経度・角度・方位などは必要に応じて表示します。レイヤは「S-BGD-BRG」の1つに、すべての図形と文字を格納します(第2編 7-4〜7-6)。
土質試験の成果:一覧表・データシート・供試体写真
土質試験及び地盤調査の電子成果品は5種類です。土質試験結果一覧表が PDF と XML の2つ、個々の試験のデータシートが PDF とデータシート交換用データ(XMLまたはオリジナルファイル)の2つ、これに試料・供試体の写真(JPG)が加わります(第6編 表2-1)。データシートの様式は地盤工学会のものが基本で、様式のない試験は受発注者間で協議して決めます。室内土質試験の結果整理で扱う一覧表は、この電子成果品と同じものです。
令和8年2月改定で何が変わったか
令和8年2月の改定で、平成28年10月版から次の点が変わりました(改定ポイントの文書による)。
- データシート交換用データのファイル形式の見直し。策定当初はデータベース化や再利用を目的にXMLで標準化されたが、現状ではデータベース化や再利用が極めて限定的なため、XMLでの納品を必須ではなくし、オリジナルファイルでの納品も可能にした。オリジナル形式で納める場合は、データ項目・順序・内容を示すデータ説明書を添える(第6編 8-8)
- 土質試験責任者の追加。柱状図や土質試験結果一覧表が一般公開され広く活用されている現状から、土質試験結果一覧表データに整理担当者の欄しかなかったのを改め、土質試験責任者の記入欄を追加した。責任者は技術士・地質調査技士・土質試験管理者の有資格者を推奨する
- JIS・JGSの改正・改訂への対応。土質試験及び地盤調査の試験コード一覧を更新し、土質試験結果一覧表データの湿潤密度・乾燥密度・土粒子の密度などの単位を g/cm³ から Mg/m³ に変更した
- 標高基準改定への対応。国土地理院が令和7年4月1日に標高成果を「測地成果2024」に改定したのを受け、測地系コードに世界測地系(JGD2024)を追加した
- 粒度組成の細粒分の追加。沈降分析を行わずシルト分・粘土分の組成が不明な場合に記入できるよう、土質試験結果一覧表データに細粒分の欄を追加した
- そのほか、交換用データでT.P.以外の標高値の記入方法や水平・斜めボーリングの方位記入を明確化し、試錐機・エンジン・ポンプの記入必要度を変更した
実務への影響が大きいのは最初の2点です。データシートをXMLで起こす作業は必須でなくなった一方、一覧表には責任者の名前で品質の裏づけを持たせる方向に変わりました。
実務でつまずきやすいのはどこか
つまずきやすいのは、適用する要領の版の確認、紙・PDFしかない過去の柱状図、XMLの整合確認、報告書作成との二度手間の4点です。
どの版の要領を適用するかを最初に確かめる
要領は改定されるので、案件ごとに適用する版を確認します。注意したいのは、地質・土質調査共通仕様書(案)令和8年度版(一部改定 令和8年3月25日)が、第118条・第204条・第403条で「地質・土質調査成果電子納品要領(国土交通省・平成28年10月)」を名指ししている点です。一方で管理ファイルには適用した要領の版を「土木202602-01」のように記入します。どの版で納めるかは特記仕様書と監督職員との協議で決まるので、契約時点で確認しておくのが安全です。
紙・PDFしかない過去の柱状図
解説編のとおり、電子柱状図PDFからは埋め込まれたデータを取り出して再利用できません。既往調査の柱状図が紙やPDFだけだと、断面図や層序対比に使うには深度・土質・N値を読み取ってデータに起こす必要があり、孔数が増えるほど転記に時間を取られます。考え方は柱状図のデータ化とボーリング調査のAIデータ化にまとめています。
XMLの整合と様式適合の確認
交換用データのXMLは、DTDに合っているか、管理ファイルのボーリング名・連番と一致しているか、電子柱状図PDFの印字と食い違っていないかを確認します。フォルダ名・ファイル名は半角英数大文字、連番は0001から、といった細かな規則が多く、手作業の確認では見落としが起きます。柱状図と土質試験結果一覧表は第三者機関の検定を受ける成果なので、ここでの不整合は納品後に戻ってきます。
電子納品のデータ整備と報告書作成が二度手間になる
電子納品用のXMLやPDFを整える作業と、地質調査報告書の本文・図表を作る作業は、同じ柱状図と試験結果を元にしながら別々に進みがちです。柱状図作成ソフトで交換用データと電子柱状図を出したあと、報告書側では同じN値を表計算ソフトに転記し直す、という流れが典型です。地質調査の流れの中で、一度データにしたものをどの工程で使い回すかを決めておくと、この重複が減ります。
電子納品とAIはどう分担するか
電子納品で提出するボーリング交換用データ(XML)は柱状図そのものを表した調査成果で、柱状図作成ソフトなどで用意するのが一般的です。サファリテックの地質調査AI「CAMEL」は、その柱状図を読み取って使う側、つまりN値の整理・地盤定数の算出・報告書と集計表の作成(Word・Excel)を受け持ちます。報告書やExcelをXML形式で納めることは、通常は求められません。
CAMELは柱状図PDF・電子柱状図(XML)からN値・土質・層序を読み取り、地盤定数の算出、報告書 第1〜5章のドラフト作成、柱状図綴りの作図までを支援します。疑わしい値は要確認として表示し、最終確認は技術者が行います。電子納品のためにデータにした柱状図を、報告書側でもう一度転記する手間を減らすのがねらいで、導入企業での実業務時間にもとづく試算では、報告書の取りまとめ工数が約50時間から約35時間になります。どこまで自動化できるかは地質調査報告書の第1〜5章はどこまで自動化できるかで整理しています。詳しくはサービス資料をご覧ください。
- Q.ボーリングデータの電子納品には何が必要ですか?
- A.ボーリング1孔につき、ボーリング交換用データ(XML)・電子柱状図(PDF)・電子簡略柱状図(SXF)を1ファイルずつ作り、BORINGフォルダのDATA・LOG・DRAに格納します。コア写真はPIC、土質試験の一覧表とデータシートはTESTに入れ、それぞれの管理ファイル(XML)を添えます。
- Q.ボーリング交換用データと電子柱状図は何が違いますか?
- A.交換用データは柱状図の情報を項目ごとに記入したXMLで、データベース化やデータ交換のためのものです。電子柱状図は全地連要領の様式で印字した柱状図をPDFにしたもので、人が読むための図面です。PDFから埋め込まれたデータを取り出して再利用することはできません。
- Q.令和8年2月の改定で何が変わりましたか?
- A.データシート交換用データのXML納品が必須でなくなり、オリジナルファイルでも納められるようになりました。土質試験結果一覧表データには土質試験責任者の記入欄が追加され、有資格者が推奨されています。ほかに試験コードの更新、密度の単位変更、世界測地系(JGD2024)の追加、細粒分の欄の追加があります。
- Q.紙の古い柱状図も電子納品用にできますか?
- A.まず深度・土質・N値などを読み取ってデータにする必要があります。交換用データのXMLは柱状図作成ソフトで作るのが一般的で、CAMELは柱状図PDFの読み取りと、そのデータを使った報告書づくりの工程を担います。
- Q.CAMELは電子納品にどう使えますか?
- A.柱状図PDFや電子柱状図のXMLを読み取り、Word・Excelで報告書と集計表を作ります。電子納品で提出する柱状図のXMLは調査成果として別に作るデータで、CAMELはそれを読み取って報告書を作る側にあたります。
参考文献
- 1.国土交通省『地質・土質調査成果電子納品要領』(令和8年(2026年)2月)第1編 1 適用、2 引用規格、3 電子化対象、4 フォルダ構成(p.1-1〜1-3)、第2編 2 電子成果品、4-1 地質情報管理項目、5 ボーリング交換用データ、6 電子柱状図、7 電子簡略柱状図(p.2-1〜2-7)、第5編 3・4(p.5-1〜5-3)、第6編 2・3、8-2、8-8(p.6-1〜6-2、6-19、6-27)、第7編 2・3(p.7-1〜7-2)
- 2.国土交通省『地質・土質調査成果電子納品要領 解説』(令和8年(2026年)2月)第1編 1〜3(p.1-1〜1-2)、第2編 1・2 表2-2、4-1(p.2-1〜2-5)、第6編 2(p.6-2)
- 3.国土交通省『地質・土質調査成果電子納品要領の主な改定内容』(令和8年(2026年)2月)1〜6
- 4.国土交通省『地質・土質調査共通仕様書(案)』令和8年度版(一部改定 令和8年(2026年)3月25日)第102条 用語の定義 32、第118条 成果物の提出、第204条 成果物、第403条 成果物
- 5.全国地質調査業協会連合会『ボーリング柱状図作成及びボーリングコア取扱い・保管要領(案)・同解説』(2015年6月)

この記事の監修
小林 由快株式会社サファリテック 代表取締役
北海道大学工学部卒。建設コンサルタントの株式会社日水コンで、土木設計と工事監理に従事。リクルートからの業務委託で新規事業開発も経験。現在はサファリテックの代表取締役として、建設・土木向けAIプロダクトの開発を率いている。
Related Product
CAMEL(地質調査AI)
柱状図や土質試験のPDFを読み取り、N値の抽出から地盤定数の算出、報告書のドラフトと図表の作成までを支援するAIです。
- 柱状図・土質試験PDFの読み取り(技術者の確認が前提)
- N値の換算と、地盤定数(γt・c・φ・E)の算出根拠つき出力
- 報告書 第1〜5章のドラフトと、N値分布図・断面図・柱状図綴りの作図
導入企業での実業務時間にもとづく試算では、報告書作成が約50時間から約35時間になります。
地質調査AI CAMEL の詳細