標準貫入試験とは、ボーリング孔の底に専用のサンプラー(SPTサンプラー)を打ち込み、地盤の硬さや締まり具合を示すN値を求める試験です。JIS A 1219:2023「標準貫入試験方法」に規定され、N値は「SPTサンプラーを300 mm打ち込むのに必要な打撃回数」と定義されています。地盤調査で最も広く行われる試験で、基礎の設計や支持層の判定に欠かせないデータが得られます。
標準貫入試験の装置:ハンマー・ロッド・サンプラー
装置は、掘削装置、SPTサンプラー、ロッド、打撃装置(ハンマー・ガイド用ロッド・アンビル・落下装置)で構成されます。JIS A 1219:2023 の主な仕様は図1と表のとおりです。
| 項目 | JIS A 1219:2023 の規定 |
|---|---|
| ハンマー | 質量 63.5 kg ± 0.5 kg(4.4.1) |
| 落下高さ | 760 mm ± 10 mm。落下装置で自動的に外れて自由落下する(4.4.4) |
| ロッド | 呼び径 40.5。単位質量 4.19 kg/m(4.3) |
| 打撃装置の質量 | 115 kg 以下(4.4.5) |
| 掘削孔径 | 直径 65〜150 mm。記録して報告する(4.1) |
| SPTサンプラー | 二つ割りのスプリットバーレルに先端のシューと頭部のコネクターヘッドが付く。引き上げ時に試料が落ちないよう逆止弁を備える(4.2) |
| 点検 | 新しい調査地点、または少なくとも20孔ごとにロッドの直線性・サンプラー等の形状・ハンマー質量を確認(5.1) |
括弧内はJIS A 1219:2023 の箇条番号。同規格は ISO 22476-3:2005 を基に、国内の装置と試験方法に合わせて技術的内容を変更した規格です(序文)。
試験の手順:予備打ちと本打ち
所定の深さまで孔を掘り、孔底のスライムを取り除いてからサンプラーを降ろします。そこから、自沈の確認→予備打ち→本打ち→試料の採取の順に進みます。
- 自沈の確認:ロッドの先端にサンプラーを付けて孔底に降ろし、打撃装置を取り付けた時点の貫入量を記録する。軟弱地盤ではロッド自沈量とハンマー自沈量を分けて記録するのが望ましい(5.3.1)
- 予備打ち:孔底から150 mmまで(自沈を含む)打撃する。孔底の乱れた部分を通過させるための区間で、N値には数えない(5.3.2)
- 本打ち:予備打ちの後、サンプラーを300 mm貫入させる。通常は100 mmごとの打撃回数と貫入量を記録する。この300 mm分の打撃回数がN値(5.3.3)
- 試料の採取:サンプラーを引き上げ、スプリットバーレルを二つに割って試料を観察し、代表的な試料を密閉容器に保存する(5.3.4)
予備打ち150 mmと本打ち300 mmを合わせた450 mmが1回の試験の貫入量で、深度方向に一定間隔で繰り返した結果が柱状図のN値欄に並びます。
孔内の水位管理にも規定があります。地下水面以下ではパイピングを起こさないよう孔内水位を地下水位より高く保ち、掘削器具は孔底に負圧が働かないようゆっくり引き上げます(5.2)。孔底が乱れるとN値が実際より小さく出るので、試験の精度を左右する要点です。
記録の読み方:通常・打ち切り・自沈
通常は100 mmごとの打撃回数の合計がN値です。50回で打ち切った場合は打撃回数と貫入量で記録され、自沈した場合は本打ちを行いません。
本打ちは、特に必要のない限り50回の打撃で打ち切り、打撃回数と貫入量を記録します(5.3.3 b))。50回で220 mmしか入らなければ、柱状図には「50/22」と書かれ、N値は50以上という扱いになります。
実務では 50 × 300 ÷ 220 ≒ 68 のように300 mmあたりに換算した値を使うことがありますが、これは規格上のN値ではなく換算値なので、報告書ではその旨を明記します。予備打ちや本打ちで50回の打撃に対する貫入量が10 mm未満なら、コンクリート塊や玉石・転石、硬質な岩盤に当たっている可能性が高いため「貫入不能」として記録します。
軟弱な地盤では、打撃しなくてもロッドとハンマーの自重でサンプラーが沈む「自沈」が起こります。自沈による貫入量が予備打ちを含めて450 mmに達した場合、本打ちは行いません(5.3.1)。柱状図に「0」や自沈の記載があれば、「打撃で測れないほど軟らかい」という意味で読みます。
全国地質調査業協会連合会(全地連)の『ボーリング柱状図作成及びボーリングコア取扱い・保管要領(案)・同解説』(2015)は、柱状図に試験深度、100 mmごとの打撃回数、打撃回数/貫入量を記入し、N値は折れ線グラフと数値を併記するよう定めています。N値欄が折れ線と数字の両方で書かれているのはこのためです。
N値は何に使われるのか
N値は地層の区分や支持層の判定、内部摩擦角・粘着力・変形係数といった地盤定数の推定に使われます。砂質土では締まり具合(相対密度)、粘性土では硬軟(コンシステンシー)の目安です。換算式とその使い分けは「N値から地盤定数を求める方法」で解説しています。
N値の限界と、換算で気をつけること
N値は装置や手順、深さ、土質、礫の影響を受けるため、そのまま地盤の締まり具合や強さとして読まないことが要点です。
- N値は装置の状態や手順の影響を受ける。JISが20孔ごとの点検や落下高さの確認を求めているのはこのため
- 同じ締まり具合でも、深い位置ほど有効上載圧が大きくN値は大きく出る。設計指針の換算式の多くは、これを補正した換算N値(N₁)を使う
- 粘性土のN値は、含水比や過圧密の影響を受けるため、硬軟の目安に留める。粘着力は乱れの少ない試料の室内試験で求めるのが基本
- 打ち切り値の300 mm換算は規格上のN値ではない。換算した値を使うときは、その旨を報告書に明記する
- 礫や玉石に当たった場合のN値は、地盤全体の締まり具合を表していないことがある
試験結果の整理では、深度ごとのN値の転記、打ち切り値の換算、層ごとの集計、代表N値の算出が孔の数だけ発生します。サファリテックの地質調査AI「CAMEL」は、柱状図PDFからN値を読み取り、N値の換算・層ごとの集計と代表N値を出して、N値集計表をExcelで出力します。読み取った値は原典と突き合わせて補正でき、疑わしい値は要確認として表示されるので、技術者は確認と層の判断に集中できます。詳しくはサービス資料をご覧ください。
- Q.標準貫入試験とは何ですか?
- A.ボーリング孔の底にSPTサンプラーを打ち込み、300 mm貫入させるのに要した打撃回数(N値)で地盤の硬さや締まり具合を調べる試験です。JIS A 1219:2023 に規定されています。同時に試料も採取でき、土層構成の把握にも使われます。
- Q.N値はどうやって求めますか?
- A.質量63.5 kgのハンマーを760 mmの高さから自由落下させ、予備打ち150 mmの後、サンプラーを300 mm打ち込むのに要した打撃回数がN値です。通常は100 mmごとの打撃回数を記録し、その合計がN値になります。
- Q.50回打っても30cm入らないときはどうなりますか?
- A.JISでは本打ちは50回で打ち切り、打撃回数と貫入量を記録します。柱状図には「50/22」のように書かれ、N値としては50以上という扱いです。実務で300 mmあたりに換算した値を使う場合は、換算値であることを明記します。50回で10 mm未満しか入らない場合は貫入不能として記録します。
- Q.自沈とは何ですか?
- A.打撃しなくてもロッドとハンマーの自重でサンプラーが沈む状態です。軟弱な粘性土で起こります。自沈による貫入量が予備打ちを含めて450 mmに達した場合は本打ちを行わず、自沈量を記録します。
- Q.N値が大きいと何がわかりますか?
- A.一般にN値が大きいほど硬く締まった地盤であることを示します。砂質土では相対密度や内部摩擦角、粘性土では硬軟の目安として使いますが、土質によって見方が変わり、深さによる補正も必要です。
参考文献
- 1.日本産業標準調査会(JISC)『JIS A 1219:2023 標準貫入試験方法』。3 用語及び定義、4 試験装置及び器具、5 試験方法、6 試験結果、7 報告
- 2.全国地質調査業協会連合会『ボーリング柱状図作成及びボーリングコア取扱い・保管要領(案)・同解説』(2015年6月)第5編 土質ボーリング柱状図(標準貫入試験用)13 標準貫入試験
- 3.関東地質調査業協会『我が国における標準貫入試験の利用実態と留意点』(2021年)
- 4.日本建築学会『建築基礎構造設計指針』第3版(2019年11月)2.7節 地盤定数

この記事の監修
小林 由快株式会社サファリテック 代表取締役
北海道大学工学部卒。建設コンサルタントの株式会社日水コンで、土木設計と工事監理に従事。リクルートからの業務委託で新規事業開発も経験。現在はサファリテックの代表取締役として、建設・土木向けAIプロダクトの開発を率いている。
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