N値とは、標準貫入試験で得られる、地盤の硬さや締まり具合を示す指標です。JIS A 1219:2023「標準貫入試験方法」は、N値を「SPTサンプラーを 300 mm 打ち込むのに必要な打撃回数」と定義しています。地層の区分、支持層の判定、地盤定数の推定など、地盤の検討はほぼこの値から始まります。
N値の定義と測り方
ボーリング孔の底に SPTサンプラーを降ろし、質量 63.5 kg のハンマーを 760 mm の高さから自由落下させて、ロッドを介して打ち込みます。孔底の乱れた部分を通過させる予備打ち 150 mm の後、本打ちで 300 mm 貫入させるのに要した打撃回数がN値です。通常は 100 mm ごとの打撃回数を記録し、その合計がN値になります。
本打ちは特に必要のない限り 50 回で打ち切り、打撃回数と貫入量(例:50/22)を記録します。逆に、打撃しなくてもロッドとハンマーの自重で沈む「自沈」が予備打ちを含めて 450 mm に達した場合は、本打ちを行いません。
N値は 1 m ごとなど深度方向に繰り返し測り、柱状図の標準貫入試験欄に、試験深度・100 mm ごとの打撃回数・折れ線グラフと数値で記録されます。折れ線の横軸は 0〜50 で、50 を超える打ち切り値は「→」などで表します。装置と手順、打ち切り・自沈の記録の詳細は「標準貫入試験とは」で図とともに解説しています。
N値がいくつなら緩い・締まっている?砂の相対密度と設計の目安
砂では、N値0〜4が非常に緩い、4〜10が緩い、10〜30が中ぐらい、30〜50が密な、50以上が非常に密な地盤の目安です(全地連要領 表5-6)。
砂質土では、N値は締まり具合(相対密度)の目安です。全国地質調査業協会連合会(全地連)の『ボーリング柱状図作成及びボーリングコア取扱い・保管要領(案)・同解説』は、砂地盤の相対密度を図1上段の5段階(N値 0〜4「非常に緩い」〜50 以上「非常に密な」)に区分し、柱状図に記号(rd1〜rd5)で記入すると定めています。
設計側の目安は、国土交通省の河川砂防技術基準 調査編にあります。河川堤防の調査では、粘性土・有機質土でN値 4 以下の地盤を軟弱地盤の影響検討の対象とし、軟弱層の基底は粘性土でN値 4〜6 以上の層を目安に判断してよいとしています。河川構造物の支持層は、砂層・砂礫層でN値がおおむね 30 以上、粘性土層でおおむね 20 以上の層が 3〜5 m 以上連続していることが必要で、ボーリングの深さも「N値 30 以上の層が 3〜5 m 程度連続して確認される深さ」が目安です。
これらは河川分野の一般的な目安で、対象構造物によって拠る基準は変わります。それでも、N値の折れ線を読むときの物差しとして役に立ちます。
粘性土のN値はどう見るか
深いほどN値が大きく出るのはなぜか:深さの補正
同じ締まり具合の砂でも、深い位置ほど上の土の重さ(有効上載圧)に押さえられて打撃に抵抗するからです。そのため換算式の多くは、有効上載圧で補正した N₁ を使います。
N値には、締まり具合だけでなく、その深さにかかる土の重さ(有効上載圧)の影響が含まれます。同じ砂でも深い位置ほど周りから押さえ付けられて打撃に抵抗し、N値が大きく出ます。そのため、内部摩擦角などを求める比較的新しい換算式は、この影響を取り除いた補正N値 N₁ を使います。
建築基礎構造設計指針 第3版の式(2.7.3)は N₁ = N/√(σz′/100)、道路橋示方書Ⅳ下部構造編参考資料1 の式(参1.2)は N₁ = 170N/(σv′ + 70) で、どちらも有効上載圧 100 kN/m² で N₁ = N になります(σ は kN/m²)。
浅い位置では逆に N₁ が大きくなりすぎるので、下限が決められています。建築基礎構造設計指針は根入れの小さい直接基礎で支持力を過大評価するおそれがあるとして、原則として σz′ ≧ 100 kN/m² とするのがよいとし、道路橋示方書は有効上載圧が 50 kN/m² を下回る場合は 50 kN/m² として算出します。式だけ持ってきてこの下限を落とすのが典型的な間違いです。式ごとの違いは「N値から地盤定数を求める方法」で解説しています。
N値だけで判断してはいけないのはどんなときか
装置や手順に誤差があるとき、孔底が乱れたとき、礫に当たったとき、打ち切り値を換算したとき、粘性土のときは、N値だけで判断しません。
- 装置と手順の影響を受ける。JIS A 1219 は新しい調査地点または少なくとも 20 孔ごとにロッドの直線性・サンプラーの形状・ハンマー質量を点検し、落下高さ 760 mm ± 10 mm を守るよう定めている
- 孔底が乱れるとN値は実際より小さく出る。地下水面以下では孔内水位を地下水位より高く保ち、掘削器具をゆっくり引き上げることが求められる
- 礫や玉石に当たったN値は、地盤全体の締まり具合を表していないことがある。柱状図の記事欄の「礫当たり」などの特記事項を確認する
- 打ち切り値(50/22 など)を 300 mm あたりに換算した値は規格上のN値ではない。使う場合はその旨を明記する
- 粘性土のN値は硬軟の目安にとどめ、粘着力は室内試験で求める
- 深さの影響を含むので、換算式に入れる前に補正N値が必要かどうかを式の前提で確認する
N値から地盤定数をどう求めるか
設計では、N値をもとに内部摩擦角φ、粘着力c、変形係数Eといった地盤定数を推定します。河川砂防技術基準 調査編も、実測したN値から各種地盤定数を相関関係により求めることもできる、と位置づけています。ただし相関式は経験式で、土質・補正・適用範囲・拠る指針の版で結果が変わるため、室内試験や原位置試験の結果と突き合わせて採用値を決めるのが原則です。換算は「N値から地盤定数を求める方法」、地盤定数そのものは「地盤定数とは」で解説しています。
柱状図からN値を拾い、打ち切り値を換算し、層ごとに代表N値を決めて地盤定数を出す作業は、孔数が多いほど時間がかかります。サファリテックの地質調査AI「CAMEL」は、柱状図PDF・電子柱状図(XML)からN値を読み取り、換算・層ごとの集計と代表N値を出し、設計指針を選んで地盤定数を根拠つきで算出します。疑わしい値は要確認として表示するので、技術者は判断が要る箇所の確認に集中できます。詳しくはサービス資料をご覧ください。
- Q.N値とは何ですか?
- A.標準貫入試験で、質量 63.5 kg のハンマーを 760 mm の高さから落として SPTサンプラーを 300 mm 打ち込むのに要した打撃回数です。JIS A 1219:2023 に定義されていて、地盤の硬さ・締まり具合を示す基礎的な指標です。
- Q.N値が大きいほど良い地盤ですか?
- A.一般にN値が大きいほど硬く締まった地盤を意味します。砂地盤では 0〜4 が非常に緩い、30〜50 が密な、50 以上が非常に密な、という5段階で表されます。ただし粘性土では硬さの目安にとどめ、深さの影響も含むため、値だけで良否は判断しません。
- Q.N値がいくつ以上なら支持層になりますか?
- A.河川砂防技術基準 調査編では、砂層・砂礫層でおおむね 30 以上、粘性土層でおおむね 20 以上の層が 3〜5 m 以上連続していることを一般的な目安としています。実際の判断は構造物の規模や荷重条件、拠る設計基準によります。
- Q.N値はなぜ深さで補正するのですか?
- A.同じ締まり具合でも、深い位置ほど有効上載圧が大きくN値が大きく出るためです。建築基礎構造設計指針や道路橋示方書の換算式は、有効上載圧で補正した N₁ を使う前提で作られていて、浅い位置には下限(100 kN/m² または 50 kN/m²)の扱いがあります。
- Q.N値から地盤定数はどう求めますか?
- A.経験式を用いて内部摩擦角や粘着力、変形係数を推定します。あくまで目安なので、室内試験や原位置試験の結果と突き合わせ、拠る指針の式と版を確認して採用します。詳しくは「N値から地盤定数を求める方法」で解説しています。
参考文献
- 1.日本産業標準調査会『JIS A 1219:2023 標準貫入試験方法』3 用語及び定義、4 試験装置及び器具、5 試験方法
- 2.全国地質調査業協会連合会『ボーリング柱状図作成及びボーリングコア取扱い・保管要領(案)・同解説』(2015年6月)第5編 9 相対密度、相対稠度(表5-6・表5-7)、13 標準貫入試験
- 3.国土交通省『河川砂防技術基準 調査編』(2014年4月版)第15章 第2節 河川堤防の土質地質調査、第3節 河川構造物の土質・地質調査
- 4.日本建築学会『建築基礎構造設計指針』第3版(2019年11月)2.7節 地盤定数 式(2.7.3)、p.30
- 5.日本道路協会『道路橋示方書・同解説 Ⅳ下部構造編』(令和7年版(2025年))参考資料1 式(参1.2)

この記事の監修
小林 由快株式会社サファリテック 代表取締役
北海道大学工学部卒。建設コンサルタントの株式会社日水コンで、土木設計と工事監理に従事。リクルートからの業務委託で新規事業開発も経験。現在はサファリテックの代表取締役として、建設・土木向けAIプロダクトの開発を率いている。
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