岩盤の地盤定数(粘着力c・せん断抵抗角φ・変形係数E・単位体積重量γt)は、原位置試験や室内試験で求めるのが原則です。ただし風化した軟岩ではコアが採れないことが多く、標準貫入試験の換算N値から推定する方法が使われます。土砂用の換算式(大崎の式など)はそのまま使えません。岩盤には岩種を3つに分けた別の式があり、適用できるのは換算N値300まで、式の中のLogは常用対数(底は10)です。この記事では、換算N値の出し方から、岩種別の式、変形係数と単位体積重量の推定、そして本によって係数が違って見える理由までを、原典に沿って整理します。
岩盤でもN値を使ってよいのか:原則と例外
NEXCOの設計要領 第二集 橋梁建設編(2016年8月)は、岩盤の単位体積重量は岩石試験の結果に基づいて定め、強度定数と変形係数は原位置での試験や室内試験を行って求めることを標準としています。そのうえで、原位置の直接せん断試験や平板載荷試験は設計段階で実施することがかなり難しいため室内試験を中心とする方法でもよいとし、比較的軟らかい岩盤には換算N値から推定する方法も有効だと書いています(2-2-4)。
道路橋示方書Ⅳ下部構造編(2017年11月)の4.2の解説も同じ考え方です。岩盤は土砂地盤と比べて不均質で、岩相・層理・節理・断層破砕帯・風化変質帯の影響を受けるため、粘着力とせん断抵抗角の決定は困難だとしたうえで、亀裂の少ない軟岩ではコアの一軸圧縮強度 qu の1/2を粘着力とし、せん断抵抗角を無視して計算してもよい、風化軟岩ではコアの採取が難しいことが多いので、既往データに基づく換算N値と地山の物性値との相関関係で推定する方法が提案されている、と書いています。地盤工学会の『設計用地盤定数の決め方 岩盤編』(2007年)も、地山がD級程度の比較的軟らかい岩盤ではサンプリングが困難な場合が多く、やむを得ず標準貫入試験のN値からせん断定数を求めることがある、という位置づけです。
順番を整理すると、実測(原位置試験・室内試験)が先で、換算N値からの推定はそれが難しい軟岩に限った次善の方法です。硬岩には使えません。道路橋示方書は硬岩について、コアの試験結果だけでなくRQDやボーリングコアと地山それぞれのP波速度を考慮して評価することが望ましい、としています。
換算N値の求め方と、300までしか使えない理由
標準貫入試験の本打ちは300 mm貫入させるのが基本で、硬い地盤では50回打っても300 mmに達しないことがあります。その場合は打撃回数と貫入量を記録して打ち切ります。換算N値は、この50回打撃時の貫入量を300 mm相当に比例計算で引き伸ばした値です。NEXCO設計要領第二集は式(4-2-2)として次のように定義しています。
- 換算N値 = 50回 × 0.3 m ÷(50回打撃時の貫入量 m)
- 例:50回で100 mm貫入 → 50 × 0.3 ÷ 0.1 = 150
- 例:50回で50 mm貫入 → 50 × 0.3 ÷ 0.05 = 300
適用できる上限は換算N値300です。地盤工学会の岩盤編は、岩種別の式の表を適用できる範囲は標準貫入試験の換算N値が300以下の場合だと明記しています(p.79)。道路橋示方書Ⅳの解説も、既往の検討によれば換算N値300(50回打撃時の貫入量として50 mm)程度までの軟岩地山の物性値は換算N値を指標として推定可能という報告がある、としています。50回で50 mmしか入らない硬さが上限で、それより硬い岩は標準貫入試験で測る対象ではない、ということです。貫入量が小さくなるほど、わずかな測定の差が換算値に大きく効く点にも注意が要ります。
もう一つ、測定値をそのまま式に入れないことも原典が繰り返し書いている点です。岩盤編は、測定されたN値をそのまま用いるのではなく、測定値の深度方向および平面的な分布から地盤の状況に応じて設計用のN値を定める必要があるとしています。道路橋示方書の4.2も、地盤定数の特性値は単純平均ではなく、試験法ごとの精度や適用性、各種誤差の混入要因を吟味して設定するよう求めています。N値のばらつきをどう扱うかは、土砂でも岩盤でも同じ課題です。
岩種で分かれる粘着力cとせん断抵抗角φの式
換算N値から粘着力とせん断抵抗角を推定する式は、NEXCO設計要領第二集の表4-2-4「換算N値による場合の測定例」に、岩種を3つに分けて示されています。地盤工学会の岩盤編 表-2.3.10 も同じ式で、出典は設計要領第二集です。亀裂を含む試料による室内試験の結果を、全国の多数の岩種について整理したもので、岩種やき裂、風化の程度により慎重に用いる必要がある、と原典は注意しています。
| 岩種の区分 | 粘着力 c(kN/m²) | せん断抵抗角 φ(°) |
|---|---|---|
| 砂岩・礫岩・深成岩類(花崗岩・マサ土を含む) | 15.2 N^0.327 | 5.10 Log N + 29.3 |
| 安山岩 | 25.3 N^0.334 | 6.82 Log N + 21.5 |
| 泥岩・凝灰岩・凝灰角礫岩 | 16.2 N^0.606 | 0.888 Log N + 19.3 |
N は換算N値、Log の底は10(常用対数)。いずれも平均値の式で、原典は標準偏差(c は Log 軸上で 0.218/0.384/0.464、φ は 4.40/7.85/9.78°)を併記している。出典:NEXCO 設計要領 第二集 橋梁建設編(2016年8月)p.4-10 表4-2-4。式のみを転記し、表の体裁は当社で組み直した。
図を見ると、岩種の切り分けが値を決めていることが分かります。換算N値100で粘着力は69〜264 kN/m²、せん断抵抗角は21°〜40°で、どの区分に入れるかで結果が数倍変わります。泥岩・凝灰岩系は換算N値が増えてもφがほとんど動かず、強さは粘着力側に出る式になっています。原典には、粘着力とせん断抵抗角はあるN値に対して一組の組合せとして用いなければならない、という注記があります。片方だけ別の資料の値に差し替えることは想定されていません。土砂の式で同じ換算N値を入れたときにどれだけ違うかは、「N値から地盤定数を求める方法」の式と見比べると分かります。
泥岩・砂岩・礫岩が互層になっているような層では、どの区分の式を当てるかを先に決めておく必要があります。層名の書き方によって主となる岩種の読み取りが変わると、同じ層で式が入れ替わってしまうためです。土質区分と同じで、区分の根拠を記録に残しておくのが実務的です。
変形係数Eと単位体積重量γtの推定
変形係数は、NEXCO設計要領第二集が図4-2-10「岩の変形係数の測定例」として、N値と孔内水平載荷試験による変形係数の関係を全岩種1本で示しています。平均値の式は E = 27.1 N^0.69〔kgf/cm²〕で、kN/m²にするには98.1を掛けます(データ数239、相関係数0.67、標準偏差0.385)。ただし同書はこれを、概略設計等でやむを得ずその他の地盤調査結果から推定する場合の方法と位置づけています。道路橋示方書Ⅳの解説も、換算N値300回程度までの軟岩の変形係数は岩種別に換算N値との相関が整理されているが、推定精度は高くないため室内試験や孔内水平載荷試験から求めるのが望ましい、と書いています(4.2 解説 vii)。cやφ以上に、実測を優先すべき値です。
単位体積重量は岩石試験に基づいて定めるのが標準で、試験が行われておらず決定が困難な場合には、図4-2-4「岩盤の単位体積重量の測定例」から推定してもよいとされています。平均値の式は γt = 1.173 + 0.4 Log N〔tf/m³〕で、kN/m³にするには9.807を掛けます(全岩種、データ数208、相関係数0.69)。ここでもNは換算N値です。土砂の単位体積重量が指針の表で決まるのとは違い、岩盤は相関式で推定する形になっています。土砂側の扱いは「地盤定数とは」で整理しています。
本によって係数が違って見える理由:単位換算
岩の式を複数の資料で見比べると、同じ式のはずなのに係数だけ違うことがあります。たとえば泥岩・凝灰岩系の粘着力は、現行のNEXCO設計要領第二集(2016年8月)では 16.2 N^0.606 ですが、旧・日本道路公団の設計要領第二集を引いた資料では 16.5 N^0.606 と書かれています。指数の0.606と標準偏差の0.464は両方で同じです。差の正体は単位換算で、元の式が重力単位の 1.65 N^0.606〔tf/m²〕だったものを、kN/m²に直すときに10を掛けたか9.80665を掛けたかの違いです(1.65 × 10 = 16.5、1.65 × 9.80665 ≒ 16.2)。
変形係数も同じ構図です。設計要領第二集の図4-2-10は 27.1 N^0.69〔kgf/cm²〕に「×98.1 kN/m²」と添えていますが、地盤工学会の岩盤編(p.114)は同じ関係を 2 710 N^0.69〔kN/m²〕と印字しています。27.1 × 100 = 2 710 で、こちらは100で丸めた側です。原典どおりに98.1を掛けると約2 660 N^0.69 になります。数字1桁の違いですが、設計値に直接効きます。
見分け方は簡単で、係数だけ違って指数と標準偏差が一致していれば、まず単位換算(重力加速度を10で近似したか9.80665で計算したか)を疑います。報告書には、どの資料のどの版に拠ったか、単位系をどう換算したかを書いておくと、後から照合する人が迷いません。設計指針によって式が変わる話は「設計指針で地盤定数の求め方は変わる」で扱っています。
報告書に残しておくこと
- 換算N値の元になった打撃回数と貫入量(換算値であることを明記する)
- 測定値から設計用N値をどう定めたか(深度方向・平面的な分布の扱い)
- 岩種をどの区分に入れたかと、その根拠(互層や風化の程度の扱い)
- 拠った資料の名称・版・頁・図表番号と、単位系の換算
- 一軸圧縮試験や孔内水平載荷試験などの実測がある場合は、推定値より実測を優先したこと
岩盤層の定数算出をAIで
岩盤層の地盤定数は、土砂の式と岩の式を取り違えないこと、岩種の区分を決めること、拠った版と単位系を残すことに手間がかかります。サファリテックの地質調査AI「CAMEL」は、柱状図から読み取った層のうち岩盤層と判定した層に、土砂の式ではなく岩の相関式(NEXCO設計要領第二集)を当て、どの資料のどの式に拠ったかを算出根拠として併記します。岩種をどの区分に入れるか、設計用N値をどう定めるか、実測値を優先するかは技術者が判断し、根拠を見ながらワンクリックで修正できます。CAMELのサービス資料は、このページから1分ほどで請求できます。
- Q.岩盤にも大崎の式(φ = √(20N) + 15)を使ってよいですか?
- A.使えません。大崎の式は砂質土を対象にした式です。岩盤には、砂岩・礫岩・深成岩類、安山岩、泥岩・凝灰岩・凝灰角礫岩の3区分に分けた別の式があり、換算N値300以下の軟岩に限って適用します。硬岩は標準貫入試験で評価する対象ではなく、コアの試験やRQD、弾性波速度で評価します。
- Q.換算N値が300を超えたらどうしますか?
- A.岩種別の式の適用範囲外です。地盤工学会の岩盤編は適用範囲を換算N値300以下と明記し、道路橋示方書も換算N値300程度までの軟岩で推定可能という報告がある、という書き方です。それより硬い岩盤は、原位置試験や室内試験で地盤定数を求めます。
- Q.岩の式の Log は自然対数ですか、常用対数ですか?
- A.常用対数(底は10)です。NEXCO設計要領第二集の表4-2-4の備考に明記されています。一方、道路橋示方書Ⅳ下部構造編の砂質土のせん断抵抗角の式 φ = 4.8 ln N₁ + 21 は自然対数です。同じ「log」でも資料によって底が違うので、式を移すときは必ず確認します。
参考文献
- 1.東日本・中日本・西日本高速道路株式会社『設計要領 第二集 橋梁建設編』2016年8月(平成28年8月)2-2-4 岩盤の設計用地盤定数 p.4-7(式(4-2-2)・図4-2-4)、p.4-10(表4-2-4・図4-2-7・図4-2-8)、p.4-13(図4-2-10)
- 2.地盤工学会『設計用地盤定数の決め方 −岩盤編−』2007年 2.3 事例 p.79(適用範囲・設計用N値)、p.81 表-2.3.10、3.2.2 p.114(変形係数)
- 3.日本道路協会『道路橋示方書・同解説 Ⅳ下部構造編』2017年11月(平成29年11月)4.2 地盤定数の特性値 解説 v) 岩盤の粘着力c及びせん断抵抗角φ p.63、vii) 岩盤の変形係数 p.64
- 4.日本産業標準調査会『JIS A 1219:2023 標準貫入試験方法』5.3.3 本打ち
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監修:株式会社サファリテック 代表取締役 小林由快(北海道大学工学部卒。建設コンサルタント(日水コン)で土木設計・工事監理に従事した実務経験に基づき、内容を確認しています)
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