建設コンサルタント業務で生成AIが効きやすいのは、判断ではなく文章と数値の下ごしらえにあたる工程です。報告書のとりまとめ、既往資料の整理、記載内容の突き合わせといった作業がこれにあたります。逆に、設計条件の決定や照査の最終判断は人が担う工程であり、ここを置き換えるものではありません。この記事では、どの工程で何に使えるのかを段階ごとに整理します。
直轄業務では生成AIの利用にあたって計画書の提出が求められます。使い方を検討する前に、制度面の整理として生成AI利活用計画書とはをご覧ください。実際にどこまで使ってよいかは、当該業務の特記仕様書と調査職員との協議によります。
工程ごとの向き不向き
| 工程 | 生成AIが向く作業 | 人が担う判断 |
|---|---|---|
| 調査・データ整理 | 試験結果の転記、数値の集計、図表の作成 | 数値の妥当性の確認、異常値の扱いの決定 |
| 既往資料の整理 | 過去の報告書からの該当箇所の抽出、要約 | 採用する資料の選定、記載の信頼性の判断 |
| 設計 | 計算条件の整理、検討ケースの一覧化 | 設計条件の決定、適用する基準の選択 |
| 照査 | 記載の突き合わせ、数値の不整合の洗い出し | 照査結果の判断、成果品としての可否 |
| 報告書作成 | 章立てに沿ったドラフト、図表の配置、数量表の集計 | 考察の内容、結論、設計・施工上の留意点 |
工程の区分は業務の種類によって変わります。実際の適用は個別の業務内容に合わせて判断してください。
効果が出やすいのは報告書のとりまとめ
工数の観点で見ると、報告書のとりまとめは着手しやすい工程です。転記、換算、集計、図表の組版といった作業が積み上がっており、しかもそれぞれに技術的な判断が要らないためです。逆に、設計計算そのものは既存の専用ソフトが担っている領域で、生成AIを持ち込む余地は多くありません。
地質調査の分野では、柱状図や室内土質試験の結果を読み取り、N値の整理から地盤定数の算出、報告書のドラフト作成までを扱うシステムが出てきています。サファリテックの地質調査AI「CAMEL」もその一つで、自社の検証では報告書の取りまとめが約50時間から約35時間になりました。読み取りの精度は概ね90%で、検証と判断は技術者が行う前提です。どこまで自動化できるかは地質調査報告書作成AIとはで整理しています。
照査に使うときの注意
記載の突き合わせや数値の不整合の洗い出しには使えますが、洗い出した結果をどう扱うかは人の判断です。生成AIが指摘しなかったことをもって問題がないとみなすことはできません。見落としの可能性が残る以上、照査の責任は従来どおり照査技術者にあります。
また、出力された文章がもっともらしく見えることが、かえって確認を甘くする場合があります。根拠の記載がない出力は、そのまま採用しないという運用にしておくほうが安全です。
始めるときの順番
全工程で一度に使おうとすると、どこが効いたのか分からなくなります。工数が大きく、判断を含まない工程から一つ選んで試すのが現実的です。
- 対象を1つの工程に絞る(報告書のとりまとめ、データ整理など)
- 使ってよいデータとサービスを先に決める
- 従来の所要時間を記録しておき、比較できるようにする
- 成果品に反映した箇所の残し方を決めておく
使ってよいサービスの判断は業務データを入れてよい生成AIの選び方、社内のルールづくりは建設業の生成AI社内規程のつくり方で扱っています。
- Q.設計計算を生成AIに任せられますか?
- A.任せられません。設計計算は既存の専用ソフトが担う領域であり、条件の決定と結果の判断は技術者の責任です。生成AIが向くのは、計算条件の整理や検討ケースの一覧化といった前後の作業です。
- Q.どの工程から始めるのがよいですか?
- A.工数が大きく、技術的な判断を含まない工程からです。多くの場合は報告書のとりまとめやデータ整理が該当します。効果を測れるように、従来の所要時間を記録してから始めてください。
- Q.生成AIを使ったことは発注者に伝える必要がありますか?
- A.直轄業務では、業務計画書とあわせて生成AI利活用計画書を提出し、調査職員と協議することになります。成果品への注釈についても特記仕様書で定められるため、使う前に確認しておく必要があります。
Supervised by
監修:株式会社サファリテック 代表取締役 小林由快(北海道大学工学部卒。建設コンサルタント(日水コン)で土木設計・工事監理に従事した実務経験に基づき、内容を確認しています)
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CAMEL(地質調査サポートエージェント)
柱状図や土質試験のPDFを読み取り、N値の抽出から地盤定数の算出、報告書のドラフトと図表の作成までを支援するAIです。
- 柱状図・土質試験PDFの読み取り(精度は概ね90%・技術者の確認が前提)
- N値の換算と、地盤定数(γt・c・φ・E)の算出根拠つき出力
- 報告書 第1〜5章のドラフトと、N値分布図・断面図・柱状図綴りの作図
自社での検証では、報告書作成が約50時間から約35時間になりました。
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