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土木DX2026.07.31

生成AI成果物への注釈の付け方|どこまで明示するかの線引きと記載例

成果品のどこに生成AIを使ったと書けばよいのか。「可能な範囲で」とされた注釈の線引きを、巻末のまとめと図表への個別注記という二段構えで整理し、記載の文例までまとめました。

生成AI成果物への注釈とは、成果品のどの部分に生成AIを使ったのかを、後から分かる形で残しておくことです。国土交通省が直轄業務の特記仕様書に盛り込む生成AI関連の項目のひとつとして挙げられています。ただし「可能な範囲で」という書き方になっており、成果品のすべてに付けることは求められていません。実務では、報告書の巻末に利用状況をまとめ、生成AIの出力を基に作成した図表に個別注記を添える二段構えが扱いやすい形になります。

本記事は業界紙などで報じられた内容をもとに整理したものです。実際にどこまで注釈を付けるかは、当該業務の特記仕様書の記載と、着手時の調査職員との協議によります。制度全体の整理は生成AI利活用計画書とはをご覧ください。

注釈だけが単独で求められているわけではない

報じられている出力結果への留意事項は、次の3点がひと組になっています。第三者の権利侵害への配慮、類似や盗用がないかの確認、そして可能な範囲で生成AIによる生成物である旨の注釈を付すこと。注釈は単独の作業ではなく、権利侵害を避けるための確認をひととおり行ったうえで、その経緯を残すという位置づけで読むほうが実態に合います。確認をせずに注釈だけ付けても、求められていることを満たしたことにはなりません。

「可能な範囲で」をどこで線引きするか

線引きが要るのは、文章の推敲や表記の統一まで対象に含めると、成果品のほぼ全体が注釈だらけになってしまうからです。判断の軸として使いやすいのは、成果品に残っている技術的な記述の中身に生成AIの出力が反映されているかどうかです。中身に関わるものには注釈を付け、体裁を整えただけのものには付けない、と考えると線が引けます。

対象扱い考え方
生成AIの出力を基に作成した図表個別に注記する数値や形状が成果品の判断材料になる
AIが下書きした本文のうち、技術的な記述巻末にまとめて記載する記述の中身に反映が残っている
既往資料の要約・整理巻末にまとめて記載する要約の粒度が成果品に残る
文章の推敲・表現の統一通常は付けない中身ではなく体裁の調整
誤字脱字の確認通常は付けない同上
人が計算し、AIを使っていない数値付けないそもそも生成物ではない

上表は当社が実務上あたりをつけている整理で、公的な基準ではありません。どこまで個別注記するかは着手時に調査職員と協議して決めておくと、成果品の段階で後戻りしません。

巻末にまとめて書く

報告書の巻末に「生成AIの利用について」といった項目を設け、利用したサービス名とバージョン、使った工程、確認の体制をまとめて記載します。工程ごとに1行ずつ書けば足ります。着手時に提出した計画書と内容が食い違わないよう、計画書の記載をそのまま引き写す形にしておくと管理が楽になります。

  • 利用したサービス名とバージョン(社内で契約している環境かどうかも書き添える)
  • 使った工程(既往資料の整理、報告書ドラフトの作成、図表の作成など)
  • 出力をどう確認したか(原典資料との突合、管理技術者による照査など)
  • 生成AIに委ねなかった範囲(技術的な判断、地質の解釈など)

図表には個別に注記する

生成AIの出力を基に作成した図表には、図の直下に短く注記を添えます。読み手が数値の出どころをたどれることが目的なので、長い説明は要りません。出典の記載欄がある様式であれば、そこに併記する形でも足ります。

記載の文例

場所文例
巻末本報告書の作成にあたり、既往資料の整理および第3章のドラフト作成に生成AI(サービス名・バージョン)を利用しました。出力は原典資料と突合し、管理技術者が照査のうえ確定しています。地質の解釈および地盤定数の判断は技術者が行っています。
図表の直下本図は生成AIの出力を基に作成し、原典資料と照合のうえ確認しています。
表の直下本表は生成AIが整理した数値を基に作成しています。数値は原典(試験成績表)と照合済みです。

文例は書き写して使える長さにしてあります。様式や記載欄の制約は業務ごとに異なるため、特記仕様書の指示が優先します。

類似・盗用の確認をどう進めるか

生成AIの出力には、既存の文献の表現がそのまま含まれることがあります。技術的な定型文であれば問題にならない場合もありますが、まとまった記述が丸ごと出てきたときは確認が要ります。特徴的な言い回しを検索にかけて、同じ文が公開資料に存在しないかを確かめるのが基本の進め方です。

あわせて注意したいのが、引用や出典の実在確認です。生成AIは、実在しない文献名や、実在する文献の存在しない章節を出してくることがあります。出典として書かれているものは、必ず現物にあたって確認します。図表についても、既存の刊行物の図をなぞった形になっていないかを見ておく必要があります。設計指針の式や表をそのまま転載することは、もともと避けるべき扱いです。

注釈を付けても責任は移らない

注釈は、生成AIを使ったことを理由に責任を限定するためのものではありません。成果品の最終的な責任は受注者にあり、その点は生成AIを使っても変わりません。注釈は免責の記載ではなく、どこにAIを使い、それをどう確認したかという経緯を示すものだと捉えておくと、書く内容もぶれません。逆に言えば、確認の体制まで書いてあれば、注釈は品質を担保している証拠として働きます。

業務特化型のAIを使う場合も対象になるか

対象になると考えて、計画書と注釈の両方に書いておくのが安全です。汎用のチャットサービスでなくても、出力が成果品の記述に反映されるのであれば、求められている趣旨は同じです。当社の地質調査AI「CAMEL」も例外ではありません。ただし、業務特化型のAIは入力が自社の調査データに限られ、出力が原典PDFと照合できる形で残るため、確認の経緯を具体的に書きやすいという違いはあります。何をどう確認したかを書けることが、注釈では効いてきます。

Q.成果品のどこまでに注釈を付ければよいですか?
A.報じられている範囲では「可能な範囲で」とされており、すべてに付けることは求められていません。生成AIの出力を基に作成した図表に個別注記を添え、それ以外の利用状況は巻末にまとめる二段構えであれば、作業量として無理がありません。どこまで個別注記するかは、着手時に調査職員と協議して決めておくことをおすすめします。
Q.文章の推敲に使った場合も注釈が必要ですか?
A.表現を整えただけであれば、通常は個別の注釈までは要らないと考えられます。ただし、利用した事実自体は巻末にまとめて記載しておくほうが、計画書との整合が取れます。判断に迷う場合は調査職員に確認してください。
Q.注釈を付ければ、内容の責任は問われなくなりますか?
A.そうはなりません。成果品の最終的な責任は受注者にあります。注釈は責任を限定するものではなく、どこにAIを使い、それをどう確認したかを示すものです。
Q.類似・盗用の確認は具体的に何をすればよいですか?
A.出力に含まれる特徴的な言い回しを検索して、同じ文が公開資料に存在しないかを確かめます。あわせて、出典として書かれた文献が実在するかを現物で確認します。生成AIは存在しない文献名を出すことがあるため、この確認は欠かせません。
Q.業務に特化したAIサービスでも注釈は必要ですか?
A.必要と考えて計画書と注釈の両方に記載しておくのが安全です。汎用のチャットサービスかどうかではなく、出力が成果品の記述に反映されるかどうかで判断してください。

成果品の様式そのものをどう直すかはAI学習に配慮した報告書とはで、地質調査報告書の作成工程については地質調査報告書の作成をAIで効率化で扱っています。計画書の様式と記入例はこちらから無料で配布しています。社内での線引きを実際の成果品を題材に決めたい場合は、法人向けのAI活用研修でも扱えます。

Supervised by

監修:株式会社サファリテック 代表取締役 小林由快(北海道大学工学部卒。建設コンサルタント(日水コン)で土木設計・工事監理に従事した実務経験に基づき、内容を確認しています)

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