生成AI利活用計画書とは、業務で生成AIをどう使うかを、利用目的・用途・利用するサービス名・利用範囲といった項目で整理し、業務計画書とあわせて発注者(調査職員)に提出する書類です。国土交通省が2026年5月以降の直轄土木業務の特記仕様書に生成AIの利活用ルールを明記する方針を示したことで、建設コンサルタント業務などで作成が求められるようになりました。
本記事は業界紙で報じられた内容をもとに整理したものです。実際に何をどこまで記載するかは、当該業務の特記仕様書の記載および調査職員の指示が優先します。着手時の協議で必ず確認してください。
なぜ計画書の提出が求められるようになったのか
国土交通省は、直轄土木の建設コンサルタント業務等で生成AIの積極的な利活用を推進する方針を打ち出しました。業務発注時の特記仕様書に基本的な活用ルールを順次明記し、受発注者の双方が同じ前提で生成AIを使える環境を整えるという考え方です。禁止するのではなく、使う前提でルールを共有する形になっている点が特徴です。
背景には、生成AIの利用が実務で先行して広がる一方、機密情報の扱いや第三者の権利侵害、成果品の品質担保について受発注者の認識が揃っていなかったという事情があります。計画書は、その認識合わせを着手時に済ませるための書類と考えると分かりやすくなります。
特記仕様書に盛り込まれる内容
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 生成AIの取扱い | 積極的な利活用を推進する方針。目的・用途・利用範囲は受発注者間の協議で定める |
| 生成AI利活用計画書 | 業務計画書の作成時に、利用目的・用途・利用サービス名・利用範囲を記載して提出する |
| 出力結果への留意 | 第三者の権利侵害への配慮。可能な範囲で生成AIによる生成物である旨を注釈で示す |
| AI学習への配慮 | 成果品を構造的に記載し、後からAIが読み取りやすい様式に努める |
業界紙の報道をもとに整理。実際の記載は各業務の特記仕様書によります。
計画書に書く項目と、書き方の具体例
1. 利用目的
なぜ生成AIを使うのかを1、2文で書きます。抽象的に「業務効率化のため」とだけ書くより、どの作業の時間を減らして何に充てるのかまで書いたほうが、後の協議がスムーズになります。あわせて、技術的な判断は生成AIに委ねないことを明記しておくと、品質面の懸念に先回りできます。
2. 利用する業務・用途
工程ごとに、どの作業でどう使うかを具体的に書きます。打合せ記録の文字起こしと要約、既往資料の要約と論点抽出、報告書の章立て案と文案の作成、照査時の誤字脱字や用語不統一の確認補助あたりが、実務では書きやすい内容です。
逆に、設計計算そのものや構造の妥当性判断は使わないと明記しておくほうが安全です。使う範囲を広く取るほど、後から確認体制の説明を求められます。
3. 利用する生成AIサービス
サービス名、提供事業者、契約形態を書きます。ここで重要なのは、入力したデータが提供事業者のモデル学習に利用されない契約または設定になっているかどうかです。法人向けプランや、学習利用をオフにする設定の有無を確認し、その結果を計画書に書きます。個人契約の無償版は入力内容が学習に使われる場合があるため、業務データの入力には使わないと決めておくのが無難です。
4. 利用範囲(入力してよい情報と、入力しない情報)
計画書のなかで、実務上いちばん効くのがこの項目です。入力してよい情報と入力しない情報を並べて書くと、社内の担当者が迷わなくなります。
- 入力してよい例:公開されている技術基準や指針、自社が作成した文案、固有名詞と数値を伏せたうえでの検討事項の相談
- 入力しない例:発注者から貸与された未公表資料、用地関係者などの個人情報、第三者に著作権のある図面や写真や文献本文、保安上の理由で公開されていない施設情報
5. 出力結果の確認体制
生成AIの出力をそのまま成果品としないことを前提に、誰が何をどう確認するかを書きます。技術的な記述と数値は原典資料と突合する、引用と出典は実在を確認する、成果品全体は照査要領に基づいて管理技術者が確認する、といった形で、既存の照査の流れに組み込むのが現実的です。新しい確認体制を別に立てると運用が続きません。
実務でつまずきやすい3つの論点
生成AIによる生成物である旨の注釈は、どこまで付けるのか
文章の推敲まで含めると、成果品のほぼ全体が対象になりかねません。実務的には、報告書の巻末に「生成AIの利用について」の記載を設けて利用したサービス名と工程をまとめ、生成AIの出力を基に作成した図表には個別に注記する、という二段構えが扱いやすい形です。どこまで個別注記するかは、着手時に調査職員と協議して決めておくと、後戻りがありません。
「AI学習に配慮した報告書」とは何をすればよいのか
見出しの階層を明確にし、数値を本文に埋め込まず表として整理する、という方向です。マークダウン記法のように構造が読み取れる形にしておくと、後から機械的に読めます。具体的には、章と節と項に通し番号を付ける、書式だけで見出しに見せる作り方をやめる、図は画像の貼り付けだけにせず元の表データを併せて残す、といった対応になります。
これは成果品の作り方そのものの見直しになるため、計画書に書いて終わりにはなりません。社内のひな形を直すところまで含めて考えておく必要があります。データの構造化という点では、ボーリングデータの電子納品や地質調査報告書の作成で議論されてきた話とつながります。
どのサービスなら業務データを入れてよいのか
判断の軸は、入力データが学習に使われないこと、データの保存先が説明できること、社内で利用ログを管理できることの3点です。無償版と法人向けプランでは扱いが違うため、契約書や利用規約の該当箇所を確認し、確認した事実を計画書に書きます。「安全だと思う」ではなく「学習に利用されない設定であることを確認済」と書けるようにしておくのが要点です。
提出までの進め方
- 特記仕様書の生成AIに関する条項を読み、提出の要否と記載範囲を確認する
- 社内で使うサービスを決め、学習利用の設定と契約形態を確認する
- 入力してよい情報と入力しない情報を社内で線引きし、担当者に周知する
- 計画書を作成し、業務計画書とあわせて調査職員に提出して協議する
- 協議で決まった事項(注釈の方法など)を計画書に反映し、記録として残す
最初の1件は時間がかかりますが、社内の線引きとひな形が固まれば、2件目以降は業務内容に合わせて差し替えるだけになります。当社では、この計画書の様式と記入例を無料で配布しています。生成AI利活用計画書の様式・記入例をダウンロードからお使いください。
- Q.生成AI利活用計画書は、すべての業務で提出が必要ですか?
- A.提出の要否は各業務の特記仕様書の記載によります。国土交通省は2026年5月以降、直轄土木の建設コンサルタント業務等の特記仕様書に生成AIの取扱いを順次明記する方針を示しています。まず該当業務の特記仕様書を確認し、記載がある場合は調査職員と協議してください。
- Q.生成AIを使わない場合でも、計画書は必要ですか?
- A.利用しない場合の取扱いも特記仕様書と調査職員の指示によります。利用しない方針であれば、その旨を業務計画書に記載して協議しておくと、後の認識違いを避けられます。
- Q.生成AIの出力をそのまま成果品に使ってもよいですか?
- A.使えません。出力には誤りが含まれる可能性があるため、技術的な記述や数値は原典資料と突合し、担当技術者と管理技術者が確認したうえで採用する前提で計画書を作成します。第三者の権利侵害がないかの確認も受注者側で行う必要があります。
- Q.どの生成AIサービスを使えばよいですか?
- A.特定のサービスが指定されているわけではありません。入力データが提供事業者のモデル学習に利用されない契約または設定であること、データの保存先を説明できること、社内で利用者とログを管理できることを満たすサービスを選び、その確認結果を計画書に記載します。
社内でどこまで使ってよいかの線引きや、実際に業務が速くなる使い方の定着までを含めて進めたい場合は、法人向けのAI活用研修もあわせてご検討ください。施工側の書類業務が中心の場合は建設業向けのAI研修をご覧ください。
Supervised by
監修:株式会社サファリテック 代表取締役 小林由快(北海道大学工学部卒。建設コンサルタント(日水コン)で土木設計・工事監理に従事した実務経験に基づき、内容を確認しています)
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