土の単位体積重量(γt)は、土1 m³あたりの重さで、単位は kN/m³ です。自然地盤の湿潤単位体積重量は、河川砂防技術基準や道路橋示方書の標準値でおおむね14〜20 kN/m³の範囲にあります。地下水位より下の土は浮力の分だけ軽く扱い、表の値から9を引くか、水中単位体積重量を使います。
単位体積重量は土質試験で求めるのが基本で、標準値の表は試験値が無いときや概略設計で使うものです。この記事では、湿潤・飽和・水中の違い、地下水位以下の扱い、指針ごとの標準値の考え方、試験との関係、設計のどこに効くかを順に見ていきます。N値から内部摩擦角や粘着力を求める換算式はN値から地盤定数を求める方法で扱っています。
単位体積重量とは:湿潤・飽和・水中の違い
土は、土の粒子と、そのすき間の水と空気でできています。建築基礎構造設計指針は、土の単位体積重量として乾燥・湿潤・飽和・水中の4つを挙げています。設計でよく使うのは次の3つです。
- 湿潤単位体積重量(γt):地下水位より上の、自然の状態の土の重さ。すき間に水と空気がある
- 飽和単位体積重量(γsat):すき間が全部水で満たされた土の重さ。湿潤より少し重い
- 水中単位体積重量(γ′):飽和単位体積重量から水の重さを引いた値。地下水位より下の土が浮力を受けた状態の重さ
指針がどれを使うかも分けています。建築基礎構造設計指針は、地下水位より浅い地盤の応力算定と応答解析には主に湿潤単位体積重量を、地下水位より深い地盤の応力算定には水中単位体積重量を、応答解析には飽和単位体積重量を使うとしています。
地下水位より深いところは「9を引く」?「10を引く」?
河川砂防技術基準 設計編と道路橋示方書 Ⅰ共通編の解説は、どちらも「地下水位以下にある土の単位体積重量は、表の値から9を差し引いた値としてよい」としています。河川砂防技術基準は理由も書いています。飽和単位体積重量は表の湿潤単位体積重量より1 kN/m³ 程度重く、そこから水の重さ10 kN/m³(9.8の丸め)を差し引くので、まとめて9を引く、という考え方です(図1)。
NEXCO 設計要領 第一集 土工建設編は、引く値を分けています。地下水位以下の単位体積重量は、表の値から飽和土なら10 kN/m³、不飽和土なら9 kN/m³を引きます。建築基礎構造設計指針は、表そのものに湿潤・飽和・水中の3つの列を持ち、水中の列は飽和の列から10を引いた値になっています。
どの地下水位を境にするかも決めておく必要があります。河川砂防技術基準と道路橋示方書は、施工後の水位の平均値を考えるとし、建築基礎構造設計指針は、常時の荷重には年平均水位程度、地震時には年平均水位に変動幅を考えた値か月平均の最高値を使うとしています。調査時の孔内水位をそのまま使わない理由は地下水位とはで整理しています。
指針ごとの標準値は、どう違う?
土質試験の値が無いとき、各指針は土質と締まり具合で選ぶ標準値の表を持っています。値の大きさは近いものの、土質の分け方と地下水位以下の扱いが違います。
| 指針 | 土質の分け方 | 地下水位以下 | 表の位置づけ |
|---|---|---|---|
| 河川砂防技術基準 設計編 | 自然地盤(砂及び砂礫・砂質土・粘性土)×緩い/密な。盛土・埋戻し土は土質ごとに1つの値 | 表の値から9を引く | 一般的な値。土質試験データがあればその値で設計することが望ましい |
| 道路橋示方書 Ⅰ共通編(解説) | 河川砂防技術基準と同じ構成・同じ値の「概略設計で用いる例」 | 表の値から9を引く | 施工箇所の土質試料で求めるべきで、概略設計なら表の値を用いてもよい |
| 建築基礎構造設計指針 | 礫・砂・シルト・粘土・関東ローム・高有機質土×ゆるい/密な | 水中単位体積重量の列を使う | 試験結果から求めるのが基本。無い場合に自然地盤を対象とした表を参照 |
| NEXCO 設計要領 第一集 土工建設編 | 盛土(締固めたもの)と自然地盤を、土質と状態で細かく分け、φ・c と一緒に示す | 飽和土は10、不飽和土は9を引く | 土質試験で決めるのが原則。試験ができない場合や概略の検討で使う |
各指針の本文・解説をもとに当社が要約したもの。河川砂防技術基準の表の値(自然地盤の砂質土で緩い17・密な19など)はN値から地盤定数を求める方法に載せています。
同じ「砂」でも、建築基礎構造設計指針の砂(ゆるい16・密な18)と、河川砂防技術基準の砂質土(緩い17・密な19)では1違います。土質の分け方が違うので、どちらが正しいということではありません。案件で使う設計基準の表から取り、別の指針の表と混ぜないことが大切です。報告書には、どの指針のどの表から取った値かを書いておくと、後で見直すときに迷いません。
盛土や埋戻し土は、締固め具合で重さが変わります。建築基礎構造設計指針は、盛土や埋戻し土の値を決めるときは締固め具合を考えるとしています。河川砂防技術基準は、堤防の盛土材料が明確でない場合は一般に18 kN/m³を用いるとしています。
試験で求めるには:湿潤密度試験
単位体積重量は、室内の土の湿潤密度試験(JIS A 1225)で求めた湿潤密度ρt(g/cm³)に重力加速度を掛けて出します。たとえばρt=1.80 g/cm³ なら、γt=1.80×9.81≒17.7 kN/m³ です。
ここで注意したいのは、試料の採り方です。建築基礎構造設計指針は、粒度や含水比などの物理特性は標準貫入試験のサンプラーで採った試料の室内試験で求めるとしたうえで、湿潤密度だけをそこから外しています。標準貫入試験の試料は打ち込みで乱れていて、自然の状態の体積が分からないためです。湿潤密度を測るには、乱さない試料が要ります。乱さない試料を採っていない層は、標準値の表から選ぶことになります。
単位体積重量は設計のどこに効く?
有効上載圧(N値の補正・液状化・圧密)
単位体積重量がいちばん広く効くのは、有効上載圧の計算です。ある深さの有効上載圧は、その上にある各層の単位体積重量×厚さを足して求め、地下水位より下の層は浮力を引いた値を使います。地下水位が1 m浅くなると、その1 m分が湿潤から水中の値に変わり、それより深いすべての位置で有効上載圧が小さくなります(図2)。
有効上載圧は、N値を補正した換算N値(N₁)、液状化判定の強度と地震時せん断応力、圧密沈下の計算に入ります。単位体積重量の1や地下水位の1 mの違いが、これらの結果をそろって動かします。
土圧と荷重
構造物に働く土圧も、単位体積重量に比例します。河川砂防技術基準 設計編は、静止土圧を Phd=K₀(γh+q₀)で求め、静止土圧係数 K₀ は通常0.5と考えてよいとしています。γが1違えば、深さ5 mでは静止土圧が2.5 kN/m²変わります。盛土や埋戻しの荷重、構造物の死荷重に入る土の重さも同じ値から計算します。
単位体積重量は、層ごとに土質と締まり具合を見て、指針の表から選び、地下水位で湿潤と水中を切り替える作業です。孔数と層数が多いほど、転記と計算が積み上がります。サファリテックの地質調査AI「CAMEL」は、柱状図PDF・電子柱状図(XML)からN値・土質・層序を読み取り、案件で使う設計指針を選んで、単位体積重量を含む地盤定数を算出根拠つきで出し、報告書 第1〜5章のドラフト作成までを支援します。どの値を採るかの最終判断は技術者が行い、転記と計算はCAMELに任せられます。詳しくはサービス資料をご覧ください。
- Q.土の単位体積重量の目安はどのくらいですか?
- A.自然地盤の湿潤単位体積重量は、河川砂防技術基準や道路橋示方書の標準値でおおむね14〜20 kN/m³です。粘性土の緩いもので14、砂及び砂礫の密なもので20といった幅があります。建築基礎構造設計指針は、高有機質土のように軽い土も区分に入れています。土質試験の値があれば、そちらを優先します。
- Q.地下水位以下の単位体積重量はどう計算しますか?
- A.河川砂防技術基準と道路橋示方書では、表の値から9を引きます。飽和で1程度重くなり、水の重さ10を引くためです。NEXCO 設計要領 第一集では、飽和土なら10、不飽和土なら9を引きます。建築基礎構造設計指針では、表の水中単位体積重量の列を使います。
- Q.湿潤単位体積重量と飽和単位体積重量、水中単位体積重量の違いは何ですか?
- A.湿潤は自然の状態(すき間に水と空気がある)の土の重さ、飽和はすき間が全部水で満たされた土の重さ、水中は飽和から水の重さを引いた、浮力を受けた状態の重さです。地下水位より上の応力算定には湿潤を、下の応力算定には水中を使います。
- Q.単位体積重量は標準貫入試験の試料で求められますか?
- A.求められません。標準貫入試験の試料は打ち込みで乱れていて体積が変わるため、湿潤密度は乱さない試料で測ります。乱さない試料が無い層は、案件で使う設計指針の標準値の表から、土質と締まり具合で選びます。
- Q.指針によって標準値が違うのはなぜですか?
- A.土質の分け方と締まり具合の区分が指針ごとに違うためです。たとえば建築基礎構造設計指針は「砂」、河川砂防技術基準は「砂質土」で区分しており、値も1違います。案件で使う設計基準の表から取り、別の指針の表と混ぜないようにします。
参考文献
- 1.日本建築学会『建築基礎構造設計指針』第3版(2019年11月)2.7節 地盤定数 (2) 地下水位 p.28-29、a) 物理特性 p.29、表2.7.3 土の単位体積重量 p.30
- 2.日本道路協会『道路橋示方書・同解説 Ⅰ共通編』平成29年版(2017年)8.7 土圧の解説 表-解8.7.2 概略設計で用いる土の単位体積重量の例と注(1)〜(4)、p.119
- 3.国土交通省『河川砂防技術基準 設計編』第1章第7節 堰(令和4年6月版)表7-5 土の単位体積重量と注記、静止土圧、p.148-149
- 4.国土交通省『河川砂防技術基準 設計編』第1章第8節 樋門(令和3年4月版)表8-3 土の湿潤単位体積重量と注記(飽和で1 kN/m³程度重く、水の重量10 kN/m³を差し引く)、p.201
- 5.東日本・中日本・西日本高速道路『設計要領 第一集 土工建設編』(令和8年7月)4-3 設計に用いる土質定数、表1-13 土質定数、p.1-41〜1-42
- 6.国土交通省『地質・土質調査成果電子納品要領』(令和8年2月)本編 表6-6(A1225 土の湿潤密度試験 JIS A 1225-2020)

この記事の監修
小林 由快株式会社サファリテック 代表取締役
北海道大学工学部卒。建設コンサルタントの株式会社日水コンで、土木設計と工事監理に従事。リクルートからの業務委託で新規事業開発も経験。現在はサファリテックの代表取締役として、建設・土木向けAIプロダクトの開発を率いている。
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