圧密とは、水で満たされた粘性土が荷重を受けて、すき間の水(間隙水)を少しずつ外へ押し出しながら縮んでいく現象です。圧密沈下は、この圧密によって地盤が時間をかけて沈むことをいいます。砂地盤の沈下が載荷とほぼ同時に収まるのに対し、粘性土では長い年月をかけて進み、盛土や建物の完成後に傾きや不同沈下として現れます。そのため盛土や構造物の計画では、沈下量と沈下にかかる時間を事前に見積もります。
圧密沈下はなぜ粘性土で起きる?
粘性土は水を通しにくく、荷重を受けた後に間隙水がゆっくり抜けて、その分だけ縮むからです。
粘性土は粒が細かく水を通しにくいため、荷重がかかっても内部の水がすぐには抜けません。図1のとおり、載荷直後は増えた荷重を間隙水の圧力(間隙水圧)が受け持ち、水が絞り出されるにつれて荷重が土粒子へ移り、抜けた水の分だけ土が縮んで沈下します。
河川砂防技術基準は、地下水のくみ上げによる広域的な地盤沈下も同じ仕組みで説明していて、帯水層の水圧が下がると粘性土中の水圧も徐々に低下し、土粒子構造が収縮する「脱水圧密現象」が各層で累積して地表の沈下になるとしています。盛土や建物の荷重による沈下も、地下水くみ上げによる地盤沈下も、粘性土の中で起きていることは同じです。
沈下が進む層を杭が貫いている場合は、沈下する地盤が杭を下へ引きずる負の摩擦力も検討の対象になります(支持杭と摩擦杭の違い)。
過圧密と正規圧密は何が違う?
現在の土かぶり圧が圧密降伏応力より小さい状態が過圧密、等しい状態が正規圧密です。
違いは、地盤が過去に受けた最大の荷重と、いま受けている荷重の関係です。圧密試験で荷重を段階的に増やすと、ある荷重までは縮みが小さく、超えると急に大きく縮み始めます。この境目が圧密降伏応力 pc で、過去に受けた最大の荷重の目安です。現在の土かぶり圧 pv が pc より小さい状態を過圧密、pv と pc が等しい状態を正規圧密と呼びます。
堆積したままの粘土は正規圧密ですが、一般的な粘土地盤は、過去の地下水位の変動や侵食などの履歴によって過圧密状態にあることが多いとされています。
設計上は、荷重を加えた後の圧力が pc を超えなければ沈下は小さく、超えると図2のとおり圧縮指数 Cc の傾きで大きく沈下します。圧密沈下の検討では、粘性土層の厚さと並んで、圧密降伏応力の見極めが最初の要点です。
圧密沈下量と沈下時間はどう計算する?
河川砂防技術基準 調査編は、盛土の載荷による沈下の予測として、盛土中央下の軟弱層を層区分し、圧密層ごとに一次元圧密沈下量を求めて合計する方法を示しています。基本の式は S = Δe / (1 + e0) × H で、e0 は圧密前の間隙比、Δe は圧密による間隙比の減少量、H は圧密層の厚さです。正規圧密土で圧縮指数 Cc が求められている場合は S = Cc / (1 + e0) × log((p0 + Δp) / p0) × H、体積圧縮係数 mv が求められている場合は S = mv × Δp × H で計算します。p0 は盛土前の土かぶり圧、Δp は盛土荷重による増加応力です。
| 圧密試験で得られる値 | 記号 | 何に使うか |
|---|---|---|
| 圧密降伏応力 | pc | 過圧密か正規圧密かの判定。荷重が pc を超えるかで沈下量が変わる |
| 圧縮指数 | Cc | 正規圧密領域での沈下量の計算(e–log p 曲線の傾き) |
| 体積圧縮係数 | mv | 荷重増分あたりの沈下量の計算 |
| 圧密係数 | cv | 沈下がどれくらいの速さで進むか(沈下時間)の計算 |
全地連『地質と調査』159号 教養読本、河川砂防技術基準 調査編 第3章第3節 3.5 による。圧密試験の方法は JIS A 1217(段階載荷)と JIS A 1227(定ひずみ速度載荷)に規定されています。
沈下がいつまで続くかは、圧密係数 cv と、水が抜けるまでの距離(排水距離)で決まります。粘性土層が厚く、水の抜け道になる砂層が遠いほど沈下は長引きます。同じ沈下量でも数か月で収まるか数十年続くかで対策が変わるため、沈下量と沈下時間はセットで見積もります。
圧密度と沈下時間の関係
最終的な沈下量のうち、ある時点までに起きた沈下の割合を圧密度 U といいます(U = その時点の沈下量 ÷ 最終沈下量)。圧密度は時間係数 Tv で決まり、Tv = cv × t / H² の関係があります。t は経過時間、H は排水距離です。同じ圧密度に達するまでの時間は t = Tv × H² / cv となり、排水距離の2乗に比例します。粘性土層の上下が砂層なら両面から水が抜けるので排水距離は層厚の半分、片面だけなら層厚そのものです。
排水距離が2倍になると、沈下にかかる時間は4倍になります。厚い粘性土層の中に砂の層が挟まっているかどうかで沈下時間が大きく変わるため、柱状図で薄い砂層を見落とさないことが大切です。
例題:盛土の沈下量と沈下時間を概算する
上下を砂層に挟まれた厚さ H = 5 m の正規圧密粘土層の上に盛土をし、層の中央で増加応力 Δp = 50 kN/m² がかかるとします。層の中央の土かぶり圧 p0 = 60 kN/m²、圧密前の間隙比 e0 = 1.5、圧縮指数 Cc = 0.6、圧密係数 cv = 0.01 m²/日(100 cm²/日)とします(説明のための仮の値で、粘土層は1層で代表させています)。
| 求める値 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| 沈下量 S | 0.6 ÷ (1 + 1.5) × log(110 ÷ 60) × 5 = 0.24 × 0.263 × 5 | 約 0.32 m |
| 排水距離 | 両面から水が抜けるので 5 ÷ 2 | 2.5 m |
| 圧密度 50% までの時間 | Tv = 0.197 として 0.197 × 2.5² ÷ 0.01 | 約 123 日 |
| 圧密度 90% までの時間 | Tv = 0.848 として 0.848 × 2.5² ÷ 0.01 | 約 530 日(約1年5か月) |
| 片面排水だった場合の 90% | 0.848 × 5² ÷ 0.01 | 約 2,120 日(約5年10か月) |
Tv は一次元圧密理論で圧密度から決まる時間係数(U = 50% で 0.197、90% で 0.848)。log は常用対数。実務では河川砂防技術基準のとおり圧密層を区分し、層ごとに計算して合計します。
沈下量は約 32 cm で、その9割が終わるまでに約1年5か月かかる見込みです。下の砂層がなく片面からしか水が抜けなければ、同じところまで約5年10か月かかります。排水距離の2乗が効くことが、数字で分かります。工期のうちに沈下を終わらせたい場合は、盛土を段階的に立ち上げる、地盤改良をするといった対策の検討に進みます。
一次圧密と二次圧密
ここまでの、間隙水が抜けて過剰な間隙水圧がなくなるまでの圧密を一次圧密といいます。間隙水圧がなくなった後も、土の骨格がクリープのようにゆっくり縮み続けることがあり、これを二次圧密と呼びます。地盤によっては二次圧密が無視できず、盛土から5年たっても沈下が続いた堤防の例が報告されています。
地盤調査では何を確認する?
圧密沈下の検討には、まず柱状図で粘性土層の分布と厚さ、そして水の抜け道になる砂層の位置を確認します。粘性土はN値だけで判断しにくいため、乱れの少ない不撹乱試料を採取して圧密試験を行い、圧密降伏応力・圧縮指数・体積圧縮係数・圧密係数を求めます。
河川砂防技術基準は、軟弱地盤の調査で粘性土に対して含水比、湿潤密度(間隙比)、液性限界・塑性限界、一軸圧縮試験、圧密試験などを組み合わせることを挙げていて、結果は深度方向に含水比・間隙比・非排水せん断強さ・圧密降伏応力・圧密係数などの変化が分かるよう図示するとしています。
- 粘性土層の厚さと、上下の砂層(排水層)の位置
- 各深度の土かぶり圧 p0 と、圧密降伏応力 pc の大小関係(過圧密か正規圧密か)
- 圧縮指数 Cc または体積圧縮係数 mv(沈下量)と圧密係数 cv(沈下時間)
- 含水比・液性限界・塑性指数(コンシステンシー。液性限界が高い土ほど圧縮性が高い)
- 既に沈下が進んでいる地域では、水準測量や沈下計による観測記録
沈下が許容できない場合は、地盤改良を行う、盛土を段階的に立ち上げて沈下を先に進ませる、といった対策の検討に入ります。どの対策を選ぶかは沈下量と沈下時間の見積もり次第で、その根拠が上の値です。
ただ、試料ごとの試験値を成績表から拾って層ごとにまとめ、報告書の表にする作業は、試料が多いほど転記と見直しに時間を取られます。サファリテックの地質調査AI「CAMEL」は、室内土質試験の成績表を読み取って一覧表に整理し、土質試験結果一覧表をExcelで出力します。過圧密の判定や沈下の許容値の判断は技術者が担います。機能の一覧はサービス資料にまとめています。
- Q.圧密沈下とは何ですか?
- A.粘性土が荷重を受けて内部の水がゆっくり抜け、時間をかけて縮んで沈下する現象です。載荷直後は間隙水が荷重を受け持ち、水が抜けるにつれて土粒子に荷重が移って沈下が進みます。
- Q.なぜ砂ではなく粘性土で問題になるのですか?
- A.粘性土は水を通しにくく、荷重がかかっても水がすぐに抜けないため、長い時間をかけて沈下が進むためです。砂質土は水が抜けやすく、沈下は載荷とほぼ同時に収まります。
- Q.過圧密とは何ですか?
- A.地盤が現在受けている土かぶり圧が、過去に受けた最大の荷重(圧密降伏応力)より小さい状態です。新しい荷重が圧密降伏応力を超えなければ沈下は小さく、超えると大きく沈下します。
- Q.圧密とは何ですか?
- A.水で満たされた粘性土が荷重を受けて、すき間の水を少しずつ押し出しながら縮んでいく現象です。圧密によって地盤が時間をかけて沈むことを圧密沈下といいます。
- Q.圧密度とは何ですか?
- A.最終的な沈下量のうち、ある時点までに起きた沈下の割合です。時間係数 Tv = cv × t / H² で決まり、同じ圧密度に達する時間は排水距離 H の2乗に比例します。
- Q.沈下量はどう計算しますか?
- A.圧密層ごとに S = Δe / (1 + e0) × H で求めて合計します。正規圧密土なら圧縮指数を使って S = Cc / (1 + e0) × log((p0 + Δp) / p0) × H、体積圧縮係数を使うなら S = mv × Δp × H です(河川砂防技術基準 調査編)。沈下時間は圧密係数と排水距離で決まります。
参考文献
- 1.国土交通省『河川砂防技術基準 調査編 技術資料』第3章第3節 3.5 地盤沈下解析(式3-3-4〜3-3-6)、第15章第2節 河川堤防の土質地質調査
- 2.全国地質調査業協会連合会『地質と調査』2022年第1号(通巻159号)教養読本 土質試験 2-2 力学試験(圧密試験、三軸圧縮試験の正規圧密・過圧密の説明)
- 3.日本産業標準調査会(JISC)『JIS A 1217:2021 土の段階載荷による圧密試験方法』『JIS A 1227:2021 土の定ひずみ速度載荷による圧密試験方法』
- 4.龍岡文夫「土質力学 第6章 粘土の圧密」東京理科大学 講義資料(時間係数・圧密度・排水距離、一次圧密と二次圧密)
- 5.全国地質調査業協会連合会「技術フォーラム2019」論文 2019_117(二次圧密が問題になった堤防の例)

この記事の監修
小林 由快株式会社サファリテック 代表取締役
北海道大学工学部卒。建設コンサルタントの株式会社日水コンで、土木設計と工事監理に従事。リクルートからの業務委託で新規事業開発も経験。現在はサファリテックの代表取締役として、建設・土木向けAIプロダクトの開発を率いている。
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