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不撹乱試料とは|乱れの少ない試料の採取方法・取扱い・どの試験に要るかを図で解説

不撹乱試料(乱れの少ない試料)は、地盤にあったときの構造と含水状態を保って採った土の試料です。一軸圧縮・三軸圧縮・圧密など強さと沈下を調べる試験に欠かせず、粒度や含水比なら乱した試料で足ります。サンプラーの使い分け、運搬の決まり、記録のされ方も図で示します。

不撹乱試料で行った試験は、成果を整理して報告書にまとめる量が多くなります。この試験結果の整理は地質調査AI「CAMEL」で短くできます。

小林 由快

監修
小林 由快株式会社サファリテック 代表取締役

不撹乱試料とは、地盤の中にあったときの構造や含水状態をできるだけ保ったまま採取した、乱れの少ない土の試料です。国土交通省の地質・土質調査共通仕様書(案)は、サンプリングの目的を「室内力学試験に供する試料を、原位置における性状をより乱れの少ない状態で採取すること」と定めています(第301条)。仕様書や要領では「乱れの少ない試料」「乱さない試料」と呼び、標準貫入試験などで得る「乱した試料」と区別します。

実務では、強さや沈下を調べる試験にはこの試料が要り、採り方・運び方・記録の残し方で試験値が設計に使えるかどうかが決まります。

なぜ乱してはいけない?

土の強さや変形のしやすさは、土粒子の並び方や粒子どうしのつながり、間隙にある水の量で決まります。採取のときにこねられたり、運搬中に振動や衝撃を受けたりすると、この構造が壊れ、水分も移動します。乱れた試料で一軸圧縮試験を行うと、地盤が本来もつ強さより低い値が出て、支持力や安定の検討を誤る原因になります。圧密試験でも、圧縮曲線の折れ目がぼやけて圧密降伏応力が読み取りにくくなります。

河川砂防技術基準が一軸圧縮試験の結果として挙げる鋭敏比 St は、乱さない試料の強さと練り返した試料の強さの比で、乱れによってどれだけ強さを失う土かを表します。鋭敏比の高い粘土ほど、採取と運搬の乱れが結果に直接響きます。

一方、土粒子の大きさや含水比、土粒子の密度のように、構造が壊れても値が変わらない性質もあり、こうした物理試験は乱した試料で足ります。どの試験に使うかで、必要な試料の質が変わるわけです。

全地連の教養読本は、砂のように拘束圧なしでは自立しない試料には一軸圧縮試験が成立しないこと、自立する粘性土でも内部にクラックがあると一軸圧縮強さが小さく出ることを指摘しています。乱れやクラックのある試料は、三軸圧縮試験の非圧密非排水(UU)条件で強さを求める必要があります。

不撹乱試料はどう採取する?

土の硬軟に合わせて、シンウォール、デニソン、トリプルの3つのサンプリングを使い分けて採取します。

乱れの少ない試料が試験にたどり着くまでの5段階(採取・取扱い・運搬保管・室内力学試験・記録)の流れ図と、サンプラーの使い分け表。シンウォールは軟弱な粘性土(JGS 1221、N値4〜5未満が目安)、デニソンは中程度の硬質な粘性土(JGS 1222)、トリプルは硬質の粘性土と砂質土(JGS 1223)。
図1 乱れの少ない試料が試験にたどり着くまでと、共通仕様書(案)第302条のサンプラーの使い分け。砂質土は乱れの少ない採取が難しく、標準貫入試験の試料で物理試験を行うのが通常です。

共通仕様書(案)第302条は、図1のとおり採取方法を対象の土の硬軟で3つに分けています。軟弱な粘性土にはシンウォールサンプリング(固定ピストン式シンウォールサンプラー、JGS 1221)、中程度の硬質な粘性土にはデニソンサンプリング(ロータリー式二重管サンプラー、JGS 1222)、硬質の粘性土と砂質土にはトリプルサンプリング(ロータリー式三重管サンプラー、JGS 1223)です。河川砂防技術基準 調査編も、軟弱な粘土地盤では原則として固定ピストン式シンウォールサンプラー等で採取するとし、軟弱粘土では一般に N値が4〜5未満が試料採取の可能な硬さだとしています。

どこで採るかにも決まりがあります。河川砂防技術基準は、軟弱地盤の規模や区分した層の均一性・含水状態を踏まえて採取位置を設定し、地形的に一つの軟弱地盤とみなせる範囲では少なくとも2地点以上で採取するとしています。土層構造が複雑で各層1か所以上の採取が難しければ、層の類似性を考慮して採取間隔を変えてよい、とも定めています。採取深度は柱状図の層区分と対応させて決めるため、N値と土質の並びを先に読んでおきます。

砂質土の不撹乱試料は採れる?

砂は粒子どうしのつながりが弱く、チューブで採ると構造が崩れます。河川砂防技術基準は、液状化の検討では標準貫入試験で採取した試料(乱した試料)で粒度試験などの物理試験を行うとしています。動的解析などの高度な検討で繰返し非排水三軸試験を行う場合は、チューブサンプリングで乱さない試料を採ることは困難な場合が多いため、凍結サンプリング等で採取します。

透水性地盤の調査でも、通常は標準貫入試験の乱した試料で全体を把握し、必要に応じてサンドサンプラーで乱れの少ない試料を採る、という位置づけです。砂質土の強さは、試料採取よりも原位置の標準貫入試験から推定するのが基本になります。

採取後はどう運び、保管する?

採ったあとの扱いは、採取と同じくらい結果を左右します。共通仕様書(案)第303条は、採取した試料に振動、衝撃、極端な温度変化を与えないこと、すみやかに所定の試験室に運搬すること、運搬時はフォームラバー等の防護物を配して静かに運ぶことを受注者に求めています。凍結などが必要な場合は監督職員と協議します。試験室に着くまでの数日で乱れてしまえば、慎重に採取した意味がなくなります。

成果物として提出するのは、採取位置・採取深さ・採取長と、採取方法です(第304条)。これが残っていれば、試験結果を読む側が「この値はどの層の、どんな試料から出たものか」をたどれます。

柱状図と電子納品ではどこに記録する?

柱状図では試験欄に、電子納品では土質試験及び地盤調査の管理ファイルの試料採取情報の欄に記録します。

全地連の柱状図作成要領は、標準貫入試験用の土質ボーリング柱状図の試験欄に、室内試験について試料の採取深度、試料番号、採取方法、試験番号、試験を実施した区間深度を記入するとしています。試験結果が記載できる場合は結果も書き、様式に収まらなければ別途概略柱状図を作って試験結果一覧を併記します。柱状図を読むときは、この試験欄で「どの深度の試料で、どの試験をしたか」が分かります。

電子納品では、土質試験及び地盤調査の管理ファイルに「試料採取情報」の欄があり、乱れの少ない試料をコード0、乱した試料をコード1で記入します(電子納品要領 解説 第6編 表4-8)。試料番号は、ボーリング交換用データの様式L(試料採取)の試料番号と一致させます。この区分が残っていれば、過去の成果を再利用するときに、強さの値を設計に使ってよい試料かどうかを後から判断できます。

どの試験に不撹乱試料が要る?

一軸圧縮・三軸圧縮・圧密の力学試験と湿潤密度試験は、乱れの少ない試料で行います。

試験と試料の対応表。乱れの少ない試料で行うのは一軸圧縮試験(su・鋭敏比)、三軸圧縮試験(c・φ)、圧密試験(pc・Cc・mv・cv)、湿潤密度試験(ρt・ρd・e)。乱した試料でよいのは粒度試験(粒径加積曲線・D10・Uc)、含水比試験(w)、土粒子の密度試験(ρs)、液性限界・塑性限界試験(wL・wP・Ip)。
図2 どの試験にどちらの試料を使うか。強さと沈下を調べる力学試験は乱れの少ない試料、粒径や含水比などの物理試験は乱した試料で足ります。

図2のとおり、強さを求める一軸圧縮・三軸圧縮、沈下を求める圧密は、乱れの少ない試料が前提の力学試験です。湿潤密度も、地盤にあったときの密度を供試体の体積と質量から求めるため、乱れの少ない試料で行います。河川砂防技術基準 調査編は、河川堤防の軟弱地盤調査で粘性土に行う試験として、粒度、含水比、土粒子の密度、湿潤密度、液性限界・塑性限界、一軸圧縮、圧密、三軸圧縮、透水の各試験を挙げています。

粒度試験、含水比試験、土粒子の密度試験、液性限界・塑性限界試験は、土の構造が壊れても値が変わらないため、標準貫入試験の試料で行えます。土質区分やコンシステンシーの判定は、この物理試験から得られます。乱れの少ない試料の採取が難しい泥炭などの有機質土では、含水比、土粒子の密度、圧密、強熱減量を試験項目とする、と同基準は定めています。有機質土の圧密試験は乱れを承知のうえで行う、という扱いです。

報告書を読むときは、力学試験の値が乱れの少ない試料から得たものかを、柱状図の試験欄や電子納品の試料採取情報で確かめます。試験結果のどれを設計値に採るかは、N値から推定した値との突き合わせも含めて地盤定数の設定の中で判断します。

報告書では何を確かめる?

一覧表の数値が設計に使える値かどうかは、試料の履歴をたどれるかで決まります。報告書と資料編で次の5点を確かめます。

  • 採取方法が土の硬軟に合っているか。軟弱な粘性土にシンウォール、中程度の硬質な粘性土にデニソン、硬質の粘性土と砂質土にトリプル(共通仕様書(案)第302条)
  • 採取深度が柱状図の層区分と対応しているか。一つの軟弱地盤とみなせる範囲で2地点以上から採っているか(河川砂防技術基準 調査編 第15章)
  • 採取位置・採取深さ・採取長・採取方法が成果物として記録されているか(第304条)。運搬・保管で振動や衝撃、温度変化を避けた記録があるか(第303条)
  • 電子納品の土質試験及び地盤調査管理ファイルで、試料採取情報が0(乱れの少ない試料)か1(乱した試料)か。試料番号が交換用データの様式Lと一致しているか
  • 一軸圧縮強さや圧密降伏応力が、周囲の深度の値と比べて極端に低くないか。低い場合は試料の乱れを疑い、採取と運搬の記録に戻る

試験結果の整理を短くするには?

一軸圧縮試験や圧密試験の結果は、試験機関から戻ったあと、深度・試験項目・値を報告書の一覧表へ書き写す作業が待っています。サファリテックの地質調査AI「CAMEL」は、室内土質試験の成績表を読み取って一覧表に整理し、原典と突き合わせて疑わしい値は要確認として表示します。土質試験結果一覧表はExcelで出力でき、報告書 第1〜5章のドラフト作成まで支援します。

試料の乱れの有無や採用値の判断は技術者の領域で、転記と整理をCAMELが引き受けます。詳しくはサービス資料をご覧ください。

Q.不撹乱試料とは何ですか?
A.地盤本来の構造や含水状態を保ったまま採取した、乱れの少ない土の試料です。共通仕様書(案)は、室内力学試験に供する試料を原位置の性状をより乱れの少ない状態で採取することをサンプリングの目的としています。仕様書や要領では「乱れの少ない試料」「乱さない試料」と呼びます。
Q.なぜ乱れてはいけないのですか?
A.乱れると土粒子の構造が壊れて強さが下がり、実際の地盤より弱い値が出て設計を誤る原因になるためです。圧密試験でも圧縮曲線の折れ目がぼやけ、圧密降伏応力が読み取りにくくなります。
Q.どのサンプラーを使いますか?
A.共通仕様書(案)第302条では、軟弱な粘性土にはシンウォールサンプリング(固定ピストン式、JGS 1221)、中程度の硬質な粘性土にはデニソンサンプリング(JGS 1222)、硬質の粘性土と砂質土にはトリプルサンプリング(JGS 1223)です。河川砂防技術基準は、軟弱粘土では N値4〜5未満が採取できる硬さの目安としています。
Q.砂質土の不撹乱試料は採れますか?
A.チューブサンプリングでは乱さずに採ることが困難な場合が多く、通常は標準貫入試験の試料で粒度などの物理試験を行い、強さは原位置試験から推定します。動的解析など高度な検討で繰返し非排水三軸試験を行う場合は、凍結サンプリング等で乱れの少ない試料を採取します。
Q.乱した試料でできる試験は何ですか?
A.粒度試験、含水比試験、土粒子の密度試験、液性限界・塑性限界試験です。土の構造が壊れても値が変わらないため、標準貫入試験で採った試料で行えます。一軸圧縮・三軸圧縮・圧密といった強さや沈下を調べる試験には、乱れの少ない試料が要ります。

参考文献

  1. 1.国土交通省『地質・土質調査業務共通仕様書(案)』令和8年度版(一部改定 令和8年(2026年)3月25日)第3章 サンプリング 第301条 目的、第302条 採取方法、第303条 試料の取扱い、第304条 成果物、p.26
  2. 2.国土交通省『河川砂防技術基準 調査編』(2025年8月時点 統合版)第15章 第2節 河川堤防の土質地質調査(2014年4月版)2.1.2 本調査(第2次)1) ボーリング調査及び標準貫入試験・試料採取、3) 土質試験(第15章-11〜12)、2.1.4 液状化地盤調査 a) 試料の採取方法・3) 土質試験(第15章-14〜15)、第3節 河川構造物の土質・地質調査(第15章-32〜33)
  3. 3.全国地質調査業協会連合会『ボーリング柱状図作成及びボーリングコア取扱い・保管要領(案)・同解説』(2015年6月)第5編 土質ボーリング柱状図(標準貫入試験用)14〜16 試験(1)〜(3)、p.67-68
  4. 4.国土交通省『地質・土質調査成果電子納品要領 解説』(令和8年(2026年)2月)第6編 4-1 土質試験及び地盤調査管理項目(16)試料番号(17)試料採取情報、表4-8 試料採取情報コード、p.6-12〜6-13
  5. 5.全国地質調査業協会連合会『地質と調査』2022年第1号(通巻159号)教養読本 土質試験 2-2 力学試験(2)一軸圧縮試験(自立しない試料・クラックのある試料の扱い)、p.22-23
小林 由快

この記事の監修

小林 由快株式会社サファリテック 代表取締役

北海道大学工学部卒。建設コンサルタントの株式会社日水コンで、土木設計と工事監理に従事。リクルートからの業務委託で新規事業開発も経験。現在はサファリテックの代表取締役として、建設・土木向けAIプロダクトの開発を率いている。

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