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AIで建設コンサルタントの仕事はなくなるか|国交省の通知と、実務で任せた作業から見る将来

AIで建設コンサルタントの仕事がなくなるわけではありません。なくなるのは資料の読み込みや転記の時間で、決めることと責任は技術者に残ります。国交省の通知の原文と、実務でAIに任せた作業の例から、工程ごとに仕分けました。

AIに任せる作業と人が決めるところの線引きを、貴社の業務に当てはめて決めるところから、建設コンサルタントAIでお手伝いしています。

小林 由快

監修
小林 由快株式会社サファリテック 代表取締役

結論から言うと、AIで建設コンサルタントの仕事がなくなることはありません。なくなっていくのは、既往資料を読む、図面の数値を打ち直す、報告書の下書きを書く、といった「作業」の時間です。設計条件を決める、照査で良し悪しを判断する、発注者と協議する、そしてその結果に責任を持つ、という仕事は技術者に残ります。

一方で、「AIを使わない」という選択肢は狭まりました。国土交通省は令和8年7月29日付の通知で、生成AIの積極的な利活用が求められていると書いたうえで、計画書の提出や、AIが読める形での成果物づくりまで取り扱いを決めています。この記事では、通知の原文と、設計の実務でAIエージェントに実際に任せた作業をもとに、これからの建設コンサルタントの仕事がどう変わるのかを整理します。

建設コンサルタントの工程ごとに、AIに任せられる作業と人に残る判断を並べた表。既往資料:資料を読み要点を一覧にする/どの資料を根拠にするか。基準の確認:基準書の該当箇所を探し頁を示す/基準をどう当てはめるか。数値の整理:図面の数値をExcelへ・条件を変えた試算/設計条件を決める。比較検討:比較検討表のたたき台/どの案を採るか。照査:誤字脱字・数値の食い違いの洗い出し/照査の判断とその責任。報告書:概要版・要約の下書き/結論と考察。協議・現地:協議記録の下書き/発注者との協議・現地での判断
同じ工程の中に、AIに任せられる作業と、人が決めるところが両方あります。

国交省はAIの利活用を求めている

国土交通省は令和8年7月29日付の通知で生成AIの積極的な利活用を求めつつ、情報漏えいに注意してルールを決めて使うよう示しています。

まず、発注者である国の立場を原文で確かめます。国土交通省 大臣官房技術調査課は、令和8年7月29日付で「建設コンサルタント業務等における生成AI利活用等について(依頼)」(国技建管第3号・国技建調第2号)を各地方整備局などに出しました。関東地方整備局は、この通知を令和8年8月4日付で局内に伝え、ひな形やチェックリストとあわせて公開しています。

国土交通省 大臣官房技術調査課の通知「建設コンサルタント業務等における生成AI利活用等について(依頼)」の1頁目。国技建管第3号・国技建調第2号、令和8年7月29日。生成AIの活用は受発注者双方の業務効率を飛躍的に高める可能性を有しており、今後の積極的な利活用が求められている、と書かれている
通知の1頁目。出典:国土交通省 大臣官房技術調査課「建設コンサルタント業務等における生成AI利活用等について(依頼)」令和8年7月29日(関東地方整備局が公開する別添資料より)

通知の書き出しに書かれていること

通知は、生成AIの活用が「日常業務や設計業務等においても受発注者双方の業務効率を飛躍的に高める可能性を有して」おり、「今後の積極的な利活用が求められている」と書き出しています。同時に、機密性の高い行政情報や個人情報をクラウド型のAIサービスへ無秩序に入力することは、情報漏えいのリスクになると注意しています。つまり、国の方針は「使うな」ではなく「ルールを決めて使え」です。

対象になる業務

対象は、測量、土木関係建設コンサルタント業務、地質調査業務です(官庁営繕関係と港湾空港関係を除く)。ほかに発注者が必要と認める業務も含まれます。通知日以降に発注する業務だけでなく、発注手続き中の業務や契約済みの業務にも、対応できるものから当てはめるとされています。

通知で決まった3つのこと

生成AIで成果をまとめる業務では、計画書を出すこと、使った箇所を成果物に示すこと、AIが読める形で納めることの3つが決まりました。

国交省の通知で決まった3つのこと。1 計画書を出す:生成AIで成果をまとめる業務では生成AI利活用計画書を業務計画書とあわせて出す。2 使った箇所を示す:生成AIで作った成果や実質的に寄与した箇所はその旨を成果物に明示し、画像は原則注釈。3 AIが読める形で納める:見出し体系・章立て、図表のキャプション、マークダウン等の概要資料、元データ(CSV・JSON等)。法令・基準の検索補助やたたき台づくりだけなら計画書の作成指示は不要
通知の「実施内容」と「特記仕様書の記載例」から、受注者に関係する部分をまとめました。

1. 生成AI利活用計画書を出す

生成AIを使って成果をとりまとめる業務では、受注者は「生成AI利活用計画書」を、業務計画書の提出にあわせて発注者に出します。ここでいう「生成AIを用いた成果等」は、報告書・設計成果に直接影響するものとされ、例として報告書本文の生成(要約・文章生成)、設計条件の整理・記述生成、発注者への提出書類が挙がっています。

生成AI利活用計画書(ひな形)受注者配布用。項目は1 業務名、2 受注者名、3 利用目的、4 利用予定範囲、5 利用予定の生成AIサービス名、6 入力情報の取扱い、7 リスク対策、8 発注者との協議内容、9 その他の9つ。備考に、業務計画書の添付資料として発注者に提出することなどが書かれている
生成AI利活用計画書のひな形(受注者配布用)。出典:国土交通省の同通知の別添(関東地方整備局が公開)

ひな形の項目は、業務名・受注者名・利用目的・利用予定範囲・利用予定の生成AIサービス名・入力情報の取扱い・リスク対策・発注者との協議内容・その他の9つです。「どの工程で、どのAIに、何を入れるか」を自分の言葉で書けないと、この計画書は埋まりません。項目ごとの書き方は生成AI利活用計画書の書き方にまとめています。

なお、法令や基準、文献の検索補助や、検討資料のたたき台といった一般的な調査での利用にとどまる場合は、従来どおり業務計画書に情報流出防止の事項を書けばよく、計画書の作成指示は不要とされています。

2. 生成AIを使った箇所を成果物に示す

特記仕様書の記載例では、生成AIを用いて作った成果や、生成AIが成果の作成に実質的に寄与した箇所は、その旨を成果物に明示するとされています。画像に生成AIを使った場合は、原則として注釈をつけます。生成AIを使った成果物が、特許権など第三者の権利の対象になりうることに留意する、とも書かれています。

3. AIが読める形で成果物を納める

将来のAIによる知識活用や検索を見据えて、成果物の構造化と機械可読性の向上も求められています。記載例に挙がっているのは、見出し体系や章立ての整理、図表へのキャプションやテキストの付与、要旨・目次・結論などのマークダウン形式等での概要資料、可能な範囲での元データ(CSV、JSON等)の提供の4つです。これからの成果品は、人が読むだけでなく、AIが読む前提で作ることになります。

なくなるのは作業、残るのは判断

AIが担うのは各工程の作業の部分で、どの資料を根拠にするか、設計条件や結論をどう決めるかといった判断は人に残ります。

では、AIは建設コンサルタントの仕事のどこを担うのか。工程ごとに分けると、どの工程にも「AIに任せられる作業」と「人が決めるところ」が混ざっていることが分かります。仕事がまるごと消えるのではなく、1つの工程の中で作業の部分が軽くなる、というのが実態に近い見方です。

工程AIに任せられる作業人に残る判断
既往資料の確認過去の報告書や協議記録を読み、要点と数値を一覧にするどの資料を根拠にするか、資料どうしが食い違うときにどちらを採るか
基準の確認基準書や指針の該当箇所を探し、頁と原文を示すその基準をこの現場にどう当てはめるか
数値の整理図面の数値をExcelに読み取る、条件を変えた試算をくり返す設計条件を決める、試算の結果を採用するか
比較検討比較検討表のたたき台を作るどの案を採るか、その理由を発注者に説明する
照査誤字脱字、数値や単位の食い違いを洗い出す設計として妥当かの判断と、その責任
報告書概要版や要約の下書きを作る結論と考察を書く
協議・現地協議記録の下書きを作る発注者との協議、現地での判断

AIに任せた作業も、出典と突き合わせて確かめるのは技術者です。

任せやすい作業の共通点

任せやすいのは、正解の形が決まっていて、結果を元の資料と見比べて確かめられる作業です。図面の数値の読み取りなら、読んだ値と出典の頁を並べさせれば、人は図面を開いて確かめられます。反対に、「この案でよいか」のように、経験と現地の事情を踏まえて決めることは、AIに下書きを作らせても、最後の判断は人が持ちます。

8つの作業それぞれの頼み方と確かめ方は、建設コンサルタントがAIエージェントに任せられる業務8つで詳しく紹介しています。照査と積算に絞った線引きは生成AIで照査・積算はどこまでできるかをご覧ください。

実務でAIに任せた作業の例

ここからは、当社がAI研修でお手伝いした設計の実務で、実際にAIエージェントに任せた作業を紹介します。社名は伏せています。どれも「AIが全部やった」のではなく、人が頼み方を決め、出てきたものを人が確かめています。

縦断図の数値をExcelに読み取る

ある下水道設計の会社では、他社のソフトで作られた縦断図をPDFで見ながら、管底高などの数値を自社の縦断図ソフトに打ち直す作業がありました。研修では、縦断図のPDFを1つのフォルダにまとめ、何を・どこから・どんな形で・どこへ出すかを書いた頼み文をAIエージェントに渡しました。

  • 読み取りが終わるまで約40分。その間、担当の方は別の作業ができた
  • 1枚目に集計、2枚目以降に路線ごとの読み取り結果が入ったExcelができた
  • 読めない値は推測で埋めさせず、「要確認」として残させた
  • 値ごとに、読んだPDFの頁を出典として書かせた
  • 読み取りの漏れと、上流から下流への並びは、担当の方が図面と見比べて確かめている

どの程度の割合で正しく読めたかは、いま担当の方が確かめている段階なので、ここでは数字を書きません。大事なのは、AIに「読めないものは読めないと言わせる」頼み方をしたことで、人が確かめる範囲がはっきりしたことです。手順の詳しい版は下水道の縦断図をExcelに読み取るにまとめています。

DocuWorksの文書を読めるようにする

同じ会社では、過去の成果品の多くがDocuWorksの文書で残っていました。そのままではAIが中身を読めなかったため、AIエージェントに「DocuWorksの文書を読めるようにしたい」と頼むと、AIが部品を入れて読み取り用の変換ツールを作業フォルダの中に作り、読めるようになりました。部品を入れる許可の画面が何度も出るので、「知らないものが入るのが怖い」という声もありました。何を入れてよいかを先にルールとして決めておくのが安心です。詳しくはDocuWorksの文書をAIに読ませる方法をご覧ください。

例から分かること

どちらの例も、AIが担ったのは「読む・写す・作る」作業で、何を読ませるか、結果を採用するかは人が決めています。そして、頼み文の中身は、縦断図の様式や上流・下流の考え方といった設計の知識そのものでした。業務を知っている人ほど、AIにうまく頼めます。

若手は育たなくなるのか

研修の場でよく出るのが、「若手がAIに頼って、自分で作れなくなる、チェックできなくなるのではないか」という心配です。もっともな心配ですが、判断と責任が人に残る以上、AIの出したものを確かめる力はむしろ欠かせなくなります。

確かめる力は、作る経験から育つ

AIが作った表や下書きを確かめるには、どこで間違えやすいか、どの値がおかしいかが分かる必要があります。その感覚は、自分で手を動かした経験から育ちます。若手に何をAIに任せ、何を自分でやらせるかは、各社の教育方針として決めるところです。

判断に使える時間は増える

転記や下書きの時間が減れば、そのぶん、なぜこの設計条件なのか、なぜこの案なのかを考え、先輩と議論する時間に回せます。AIに作業を任せることは、若手が判断の経験を早く積む機会にもなります。

これから身につけたい3つ

AIの時代に評価される建設コンサルタントは、AIの仕組みに詳しい人というより、業務の知識を「頼み方」「確かめ方」「ルール」の形に落とせる人です。

1. 頼み方:何を・どこから・どんな形で・どこへ

AIに頼むときは、何を、どこから、どんな形で、どこへ出してほしいかを省かずに書きます。AIが途中で質問してきたら、それは頼み文に足りなかった点です。答えた内容を次の頼み文に足していくと、同じ作業が安定します。

2. 確かめ方:出典と「要確認」を残させる

AIの出したものを全部読み直していては、時間は減りません。値ごとに出典を書かせる、自信のない値は「要確認」として残させる、集計の件数を出させる。こうして、人が確かめるところを先に絞っておきます。

3. ルール:AIの「就業規則」を書く

AIエージェントには、どのフォルダを読んでよいか、どこには書き込ませないか、何をする前に人に聞くかを、設定として決めておけます。研修では、過去の成果品のフォルダは「読むのはよいが書き換えは禁止」にし、仕事の進め方のメモも別に用意しました。人の就業規則と同じで、ルールを先に決めておけば、安心して任せられます。生成AI利活用計画書の「リスク対策」の欄も、このルールがあれば具体的に書けます。

建設コンサルタントの将来

国交省の通知は、生成AIを使うことを前提に、計画書・使った箇所の明示・AIが読める成果物という3つのルールを決めました。発注者が成果物をAIで読む時代になれば、受注者がAIを使わずに同じ品質と速さを出し続けるのは難しくなっていきます。

それでも、設計条件を決め、案を選び、発注者と協議し、責任を持つのは技術者です。AIで作業の時間が減るほど、建設コンサルタントの価値は「何を決めたか」「なぜそう判断したか」に集まっていきます。仕事がなくなるのではなく、仕事の中身が判断の側に寄っていく、というのが、実務でAIを使ってみたうえでの見立てです。

国交省の通知を受けた工程ごとの使いどころは、国交省の生成AI利活用通知と建設コンサル業務でも整理しています。

よくある質問

Q.建設コンサルタントの仕事はAIでなくなりますか?
A.なくなりません。軽くなるのは、資料の読み込み、図面の数値の転記、報告書の下書きといった作業です。設計条件の決定、照査の判断、発注者との協議、その責任は技術者に残ります。
Q.国交省は建設コンサルタントにAIを使うよう求めているのですか?
A.令和8年7月29日付の通知で、生成AIの活用は受発注者双方の業務効率を飛躍的に高める可能性があり、今後の積極的な利活用が求められている、としています。そのうえで、生成AIで成果をまとめる業務では計画書の提出を求め、情報漏えいへの注意も求めています。
Q.生成AIを少しでも使ったら、生成AI利活用計画書が必要ですか?
A.通知では、法令や基準、文献の検索補助や、検討資料のたたき台といった一般的な調査での利用にとどまる場合は、計画書の作成指示は不要とされています。報告書本文の生成や設計条件の整理など、成果に直接影響する使い方をする場合に求められます。
Q.AIを使うと若手が育たなくなりませんか?
A.AIの出したものを確かめる力は、自分で手を動かした経験から育ちます。何をAIに任せ、何を若手自身にやらせるかを教育方針として決めておけば、転記の時間を判断や議論の時間に回せます。
Q.AIの時代に建設コンサルタントが身につけるべきことは何ですか?
A.AIへの頼み方(何を・どこから・どんな形で・どこへ)、確かめ方(出典と要確認を残させる)、AIに守らせるルールの書き方の3つです。どれも業務の知識があってこそ書けるものです。
Q.少人数の設計事務所でもAIを使えますか?
A.使えます。当社の研修でも、少人数の設計の会社で、縦断図の数値の読み取りやDocuWorksの文書の読み込みをAIエージェントに任せています。大きな仕組みを入れる前に、1つの作業から試すのがおすすめです。
  1. 1.国土交通省 大臣官房技術調査課「建設コンサルタント業務等における生成AI利活用等について(依頼)」令和8年7月29日 国技建管第3号・国技建調第2号(関東地方整備局公開の別添資料 https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000955100.pdf)
  2. 2.国土交通省「生成AI利活用計画書(ひな形)」受注者配布用(同通知の別添。https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000955101.pdf)
  3. 3.関東地方整備局「建設コンサルタント業務等における生成AI利活用等について」掲載ページ(https://www.ktr.mlit.go.jp/gijyutu/gijyutu00000250.html)
小林 由快

この記事の監修

小林 由快株式会社サファリテック 代表取締役

北海道大学工学部卒。建設コンサルタントの株式会社日水コンで、土木設計と工事監理に従事。リクルートからの業務委託で新規事業開発も経験。現在はサファリテックの代表取締役として、建設・土木向けAIプロダクトの開発を率いている。

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