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建設AI

設計条件が変わったときに直す箇所の洗い出し|図面・数量・計算書・報告書の整合を取り直す手順

設計条件が変わったら、まず変わった条件を書き出し、成果物7点ごとに直す箇所を一覧にした「波及表」を作ってから直し始めます。直した後は図面・計算書・数量の相互の整合を照査の観点で確かめます。分野ごとの例と、生成AIで手伝える所も整理しました。

変わった条件の書き出しや、図面・計算書・数量の食い違い探しは、建設コンサルタントAIで、貴社の成果物を題材にAIへ任せる形を一緒に作れます。

小林 由快

監修
小林 由快株式会社サファリテック 代表取締役

結論から言うと、設計条件が変わったときは、いきなり図面を直し始めるより、変わった条件を書き出し、成果物ごとに「どこを・どう直すか」を一覧にした波及表を先に作るほうが、直し漏れが出ません。直した後は、図面と計算書、図面と数量の整合を、照査と同じ観点で確かめます。

打合せのたびに条件が少しずつ変わり、図面は直したのに数量計算書が古いまま、報告書の設計条件の章も前の数字のまま。この記事は、そんな手戻りに追われている建設コンサルタントの担当技術者・管理技術者・照査技術者の方に向けて、直す箇所の洗い出し方をまとめたものです。こうした作業をAIで支える建設コンサルタントのAI推進の進め方は、サービスのページにまとめています。

設計の手戻りは、なぜ年度末に重なるのか

手戻りが年度末に重なるのは、設計条件が決まるのが遅れ、その分の直しが納期の近くにまとめて来るからです。建設コンサルタンツ協会が会員企業に行った調査では、残業が生じる外的要因として「業務量と工期のアンバランス」を挙げた会社が80.2%、「設計条件確定の遅れ」が55.3%ありました。

同じ協会の資料では、国土交通省が発注した業務のうち、契約変更後に3月納期となった業務が56%あった年度が示されています。当初は1〜2月納期だった業務の多くが、変更によって3月に移っていました。条件が後から変わること自体は、地元や関係機関との協議がある以上なくせません。減らせるのは、変わった後の直し漏れと、直し漏れを見つけるための見直しの時間です。

条件が1つ変わると、成果物7点のどこまで直しが及ぶか

条件が1つ変わると、直しは図面だけでなく、計算書・数量・工事費・施工計画・概要書まで連鎖します。共通仕様書は設計業務の成果を、設計業務成果概要書・設計計算書等・設計図面・数量計算書・概算工事費・施工計画書・現地踏査結果の7つと定めています。道路の計画高を上げる場合を例にすると、次の図のように広がります。

協議で道路の計画高を上げると、設計図面・設計計算書・数量計算書・概算工事費・施工計画書・設計業務成果概要書の6つに直しが及び、現地踏査結果は多くの場合影響しないことを示す図
道路の計画高を上げる例。高さが変わると、擁壁の高さや盛土量を通じて計算書・数量・工事費まで直しが及ぶ

直しが及ぶ範囲は分野と業務によって違います。下の表は、よくある条件の変更と、一般に直しが及びやすい成果物の例です。実際の範囲は業務の内容と、どの段階で変わったかで決まります。

分野変わりやすい条件の例直しが及びやすい所
道路計画高、幅員、交差点の形縦断図・横断図、土工と舗装の数量、擁壁やのり面、排水施設
橋梁支間長、橋台の位置、架設の条件上部工と下部工の計算、基礎の検討、一般図・構造図、数量、施工計画
河川(築堤・護岸)計画の水位、法線、堤防の断面堤防の断面図、護岸の高さと延長、樋門・樋管の敷高、数量
上下水道(管路)管の口径、土被り、ルート水理計算、縦断図、掘削と土留め、数量、開削か推進かの施工計画
トンネル坑口の位置、地山の区分支保の区間割り、坑口部の設計、数量、施工計画

分野ごとの例は一般的な傾向を整理したもので、すべての業務に当てはまるわけではありません。

直す箇所を洗い出す3つの手順

洗い出しは、①変わった条件を書き出す、②成果物ごとの波及表を作る、③直した後に整合を確かめる、の3つの順で進めます。直し始める前に①と②を済ませておくのが、直し漏れを防ぐいちばんの近道です。

① 変わった条件を書き出す

まず、何が・いつ・誰との協議で・どの値からどの値に変わったかを1行ずつ書き出します。元になるのは打合せ記録簿です。共通仕様書では、設計条件は受注者が決めて調査職員の承諾を得ることになっているので、変わった条件も記録簿で承諾の経緯が追える形にしておきます。記録簿の書き方は打合せ記録簿の作り方で詳しく扱っています。

② 成果物ごとに波及表を作る

次に、成果物7点を行に並べ、変わった条件ごとに「直す箇所・直す内容・直したか・照査したか」を書き込みます。これを波及表と呼んでいます。影響がない成果物も「影響なし」と確かめた記録を残すと、後で見直す範囲を絞れます。

道路の計画高を上げる変更について、成果物7点ごとに直す箇所・直す内容・直したか・照査したかを済と未で示した波及表の見本
波及表の見本。「未」が残っている行が、まだ整合が取れていない箇所になる

波及表は、担当を分けて直すときの割り振りにも使えます。図面と数量を別の人が直す場合でも、同じ表を見ていれば、片方だけ直って片方が古いまま、という食い違いを防げます。共通仕様書では、履行期間の延長を求めるときに延長の理由と日数の算定根拠、変更した工程表を出すことになっており、波及表はその説明の材料にもなります。

③ 直した後に、照査の観点で整合を確かめる

直した後は、照査と同じ観点で整合を確かめます。詳細設計の照査は、基本条件を確かめる照査①、細部条件を確かめる照査②、成果品を確かめる照査③の3段階で進め、詳細設計では設計図・設計計算書・数量計算書の相互の整合を確認マークで示す「赤黄チェック」が原則です。条件が変わったら、変わった条件が照査①・②のどの項目に当たるかを確かめ、照査③では波及表の行ごとに図面と計算書、図面と数量の数値を突き合わせます。照査そのものをAIでどこまで手伝えるかは生成AIで照査・積算はどこまでできるかにまとめています。

生成AIで手伝える所と、技術者が決める所

生成AIで手伝えるのは、直す箇所の候補を出すことと、成果物どうしの数値を突き合わせることです。変更をどう設計に反映するか、直した結果が妥当かを決めるのは技術者に残ります。

作業生成AIで手伝えること技術者が決めること
変わった条件の書き出し打合せ記録簿やメールから、変わった条件と変更前後の値を抜き出して一覧にするその変更を設計条件として受けるか、承諾の経緯がそろっているか
波及表づくり変わった値や関係する部材の名前が、計算書・図面の注記・数量計算書・概要書のどこに出てくるかを探して候補に挙げる候補のうち本当に直す箇所はどこか、設計の考え方を変える必要があるか
直した後の確かめ図面から読み取った寸法と、計算書・数量計算書の値を並べて、食い違う所に印を付ける食い違いの原因と、どちらに合わせるか。照査の結果
報告書の直し成果概要書の設計条件の章に、変更の経緯の下書きを足す書いた内容が設計の判断と合っているか

AIが挙げる候補には、拾い漏れも余計なものも混ざります。候補を出す作業をAIに任せ、本当に直すかの判断と最後の照査を技術者が持つ、という分け方が前提です。設計図書や発注者から預かった資料をAIに渡すときは、社内で渡してよい資料の範囲を先に決めておきます。

工程全体のどこで条件変更が起きやすいかは、建設コンサルタントの仕事の流れで受注から納品までを通して整理しています。

Q.設計条件が変わったとき、最初に何をすればよいですか?
A.変わった条件を、何が・いつ・誰との協議で・どの値からどの値に変わったかの形で書き出すことです。そのうえで、成果物ごとに直す箇所を一覧にした波及表を作ってから直し始めると、直し漏れが出にくくなります。
Q.波及表には何を書けばよいですか?
A.成果物7点(成果概要書・設計計算書・設計図面・数量計算書・概算工事費・施工計画書・現地踏査結果)を行に並べ、直す箇所、直す内容、直したか、照査したかを書きます。影響がない成果物も、確かめた記録として残しておきます。
Q.図面と数量計算書の食い違いは、どう見つければよいですか?
A.波及表で直した行ごとに、図面の寸法と数量計算書の値を並べて突き合わせます。詳細設計の照査で行う赤黄チェックと同じ考え方です。数値の突き合わせは生成AIに手伝わせられますが、食い違いの原因とどちらに合わせるかは技術者が決めます。
Q.条件変更の直しに、生成AIはどこまで使えますか?
A.打合せ記録簿から変わった条件を抜き出す、変わった値が出てくる箇所の候補を挙げる、成果物どうしの数値の食い違いに印を付ける、といった作業です。変更をどう設計に反映するか、直した結果が妥当かの判断は技術者に残ります。
  1. 1.国土交通省「設計業務等共通仕様書(案)」令和8年度版 第1編 共通編(第1108条 照査技術者及び照査の実施、第1115条 地元関係者との交渉等、第1123条 履行期間の変更、第1209条 設計業務の条件、第1211条 設計業務の成果)
  2. 2.建設コンサルタンツ協会「建設コンサルタント白書」2022年版 第4章 4-1(図4-1-3 契約納期の状況、図4-1-6 所定外労働時間が発生する内的要因・外的要因。原典は同協会「所定外労働時間等に関する実態調査(令和3年度)」2022年4月)
  3. 3.東京都建設局「詳細設計照査要領」(照査①基本条件・照査②細部条件・照査③成果品の流れ)
小林 由快

この記事の監修

小林 由快株式会社サファリテック 代表取締役

北海道大学工学部卒。建設コンサルタントの株式会社日水コンで、土木設計と工事監理に従事。リクルートからの業務委託で新規事業開発も経験。現在はサファリテックの代表取締役として、建設・土木向けAIプロダクトの開発を率いている。

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