地質断面図は、離れた複数のボーリング地点の柱状図を標高でそろえて並べ、同じ地層と判断した層どうしを線で結んで、地盤の構成を断面として描いた図面です。土台になるのは「どの層とどの層が同じか」を決める層序対比で、経験と手間の両方がかかります。描き方の決まりは電子納品要領 第4編に、作成の工程は共通仕様書(案)にあります。対比の前段の手間は、地質調査AI「CAMEL」で減らせます。
地質断面図は何のために作るのか
共通仕様書(案)は解析等調査業務の工程に「断面図等の作成」を置き、内容を「地層及び土性の工学的判定」と「土質又は地質断面図等の作成。なお、断面図は着色するものとする」と定めています(第602条)。成果物としても、現地調査結果、ボーリング柱状図、地質又は土質断面図、業務内容の検討結果を報告書にまとめて提出します(第603条)。断面図は、柱状図と並んで地質調査報告書に必ず綴じられる成果物です。
設計者は、支持層がどの深さでどう続くか、軟弱層がどこで厚くなるかを断面で読み、基礎形式や地盤改良の範囲を検討します。施工者は、掘削範囲に現れる層と地下水位を断面で確かめます。柱状図が「点」の情報なのに対し、断面図は点と点の間を技術者が解釈でつないだ「線」の情報で、孔と孔の間の境界線は推定です。
断面図に何を載せると決まっているか
図面には標題と図面輪郭、断面図、調査位置図、凡例、注記・コメントの5つを載せ、断面図には尺度や地質情報、簡略柱状図など12項目を載せます。
地質・土質調査成果電子納品要領(令和8年2月)第4編 地質断面図編は、地質断面図をCADデータ(SXF形式のP21またはP2Z)で納めることを原則とし、対象を鉛直断面図・水平断面図・斜め断面図・展開図としています。図面に載せるのは、標題と図面輪郭、断面図、調査位置図、凡例、注記・コメントの5つです。標題欄は右下隅の輪郭線に接して置き、工事名・図面名・尺度・作成者・図面番号・版情報などを書きます。版情報には「速報」「作業過程」「中間報告」「確定」などを入れ、どの段階の図面かを判別できるようにします(解説)。
断面図そのものに載せる項目は、尺度、目盛線、方位記号(水平断面図)、調査位置、現況地物(現地盤線)、地質情報、簡略柱状図、地下水位、岩級区分、物理探査結果、物性値、その他の12項目です。地質情報のうち地層・岩体区分は「境界線」「着色・模様」「名称と地質時代」の3要素で表し、記号・色・模様はJIS A 0204とJIS A 0206によります。
描き方で決まっていること
- 標高目盛はT.P.(東京湾平均海面)を原則とする。事業単位の独自座標を使う場合は標高基準を明記し、T.P.との関係を書くことが望ましい。目盛は等間隔が望ましい
- 現地盤線は、地層境界線と区別できるよう太線の実線で描く。形状は最新の測量成果を用いるのが望ましく、旧地盤線を併記する場合は線種を変えて凡例に表記する
- 地下水面は、飽和帯と不飽和帯の境界面(不圧地下水の地下水位)を指し、ボーリングの孔内水位をつないで推定する。地層境界線と区別するため記号を付け、黒以外の実線で描く。被圧地下水頭を載せる場合はその旨を明記し、帯水層を表記する
- 岩級区分線や物理探査の等値線、物性値の境界線は、地層境界線と異なる線種や黒以外の実線を使い、凡例に表記する
- 凡例には、断面図で実際に使った記号・色・模様だけを載せ、使っていないものは書かない。尺度や目盛のように意味の明確なものは凡例に含めない
- 尺度は発注者ごとの共通仕様書または特記仕様書に示す値を使う。CADは原寸で作図するので、要領でいう尺度は紙に出力したときの尺度を指す
断面図に描く簡略柱状図は、全国地質調査業協会連合会(全地連)の柱状図要領 第9編によります。属性の部分ではボーリング名・孔口標高・総削孔長を必ず表示し、斜めボーリングでは角度と方位も必須です。柱状図の部分は、標尺と、工学的地質区分名または現場土質名の模様を必ず表示し、目的に応じてN値などを加えます。地下水位の引き方は「地下水位とは」でも扱っています。
断面図はどんな工程でできるのか
柱状図を集め、標高でそろえ、孔をまたいで見比べ、同じ層をつなぎ、図面化する5つの工程でできます。
共通仕様書(案)第602条では、「資料整理とりまとめ」で計測結果の評価、異常データのチェック、柱状図の作成を行い、次の「断面図等の作成」で地層及び土性の工学的判定と断面図の作成に進みます。実務の手順にすると次の5段階です。
何を根拠に「同じ層」とみなすか、対比が難しくなる場面は「層序対比とは」で扱っています。この記事では、その前後の工程の手間に絞ります。
受け取った断面図はどこを見ればよいか
設計や施工に使う前に、次の4点を確かめると、その図をどこまで信頼してよいかが分かります。
- 孔と孔の間の境界線は推定である。柱状図の位置(簡略柱状図の標尺の線)から離れるほど不確かさは増える。孔間の距離と、測線から外れた孔を投影しているかどうかを見る
- 地下水面の線は調査時点の推定である。記号と併記された年月日を見て、季節や施工による変動を織り込む。被圧地下水頭が書かれている場合は不圧の地下水位と混同しない
- 標高基準を確認する。T.P.が原則だが、事業独自の基準を使っている図面もある。標題欄と目盛の注記でT.P.との関係を確かめる
- 標題欄の版情報を見る。「作業過程」や「速報」の図面は、対比が確定していない段階のものである
凡例には、その断面図で実際に使った記号・色・模様だけが載っているはずです。凡例にあって図中に無い層や、図中にあって凡例に無い線があれば、図面の版が混ざっている可能性を疑います。
手作業ではどこに時間がかかるのか
対比そのものは技術者の判断ですが、時間を取られるのはその手前です。既往調査の柱状図が紙やPDFのままだと、深度・土質・N値を一度データに起こさなければ並べられません(電子柱状図PDFからはデータを取り出して再利用できない、と要領の解説も述べています)。さらに孔ごとに孔口標高が違うので、深度を標高に換算して転記し直す作業が孔数分だけ発生します。
並べた後も、孔数が増えるほど見比べる組み合わせが増えます。途中で層の解釈を変えると、それまでに引いた線を引き直すことになり、担当者の経験で結果がばらつきやすいのもこの工程です。図面化の段階では、対比をやり直すたびにCADの着色・凡例も直す往復が起きます。
AIに任せられる工程、技術者が判断する工程
柱状図の読み取りと複数孔を見比べる下ごしらえはAIに任せ、同じ層かどうかの判断と正式な断面図の仕上げは技術者が行います。
サファリテックの地質調査AI「CAMEL」は、柱状図PDF・電子柱状図(XML)からN値・土質・層序を読み取り、複数孔の層序対比と簡易断面図を作って層境界の案を示します。転記と見比べの下ごしらえをAIが受け持つので、技術者は「同じ層かどうか」の判断から始められます。詳しくはサービス資料をご覧ください。
層境界を最終的に決めるのは技術者です。孔をまたいだ層境界はいつでも見直し・変更でき、AIが示した対比を技術者が確認・補正しながら進めます。CAMELが出すのは対比の結果と簡易断面図で、電子納品要領 第4編の様式に沿った正式な地質断面図(標題欄・凡例・レイヤ構成を備えたSXFの図面)はCADで仕上げる別工程です。読み取りの仕組みは「柱状図のデータ化」で説明しています。
電子納品ではどう扱うか
地質断面図のファイル名はCAD製図基準の命名規則を原則とし、図面種類を2文字で区別します。地質縦断図はGF、地質断面図(横断図を含む)はGC、地質水平断面図はGH、地質斜め断面図はGT、地質展開図はGDです。レイヤは責任主体(測量S・設計D・施工C・維持管理M)、図面オブジェクト、作図要素の3階層で名付け、標題欄・断面図・調査位置図・凡例・注記に要領の表3-1のレイヤを使います。断面図に貼る電子簡略柱状図は第2編によりBORINGフォルダのDRAに納めるので、そこから切り貼りできます。フォルダ構成は「ボーリングデータの電子納品とは」にまとめています。
- Q.地質断面図はどうやって作られますか?
- A.複数の柱状図を標高をそろえて並べ、同じと判断できる地層をつなぐ層序対比の作業から作られます。共通仕様書(案)では、柱状図の作成に続く「断面図等の作成」の工程で、地層及び土性の工学的判定と断面図の作成(着色)を行うことになっています。
- Q.地質断面図には何を載せると決まっていますか?
- A.電子納品要領 第4編では、図面に標題・図面輪郭、断面図、調査位置図、凡例、注記を載せます。断面図の中には、尺度、目盛線、調査位置、現地盤線、地質情報(地層・岩体区分、地質構造など)、簡略柱状図を載せ、必要に応じて地下水位、岩級区分、物理探査結果、物性値を加えます。
- Q.地下水位は断面図にどう描きますか?
- A.ボーリングの孔内水位をつないで地下水面を推定し、地層境界線と区別できるように記号を付け、黒以外の実線で描きます。推定に使った調査時の年月日を併記し、被圧地下水頭を載せる場合はその旨と帯水層を明記します。
- Q.CAMELで地質断面図は自動作成できますか?
- A.複数孔の層序対比と簡易断面図を作り、層境界の案を示すところまでを支援します。層境界の最終判断は技術者が行い、電子納品要領の様式に沿った正式な図面はCADで仕上げます。
- Q.対比の結果は後から修正できますか?
- A.できます。複数孔をまたいだ層境界の見直し・変更はいつでも可能で、技術者が確認・補正しながら進められます。
参考文献
- 1.国土交通省『地質・土質調査成果電子納品要領』(令和8年2月(2026年2月))第4編 地質断面図編 2 地質断面図の電子成果品(2-1〜2-4、p.4-1〜4-2)、3-1 図面に記載する情報、3-2 標題、3-3 断面図(3-3-1〜3-3-12)、3-5 凡例、3-7 レイヤ構成(p.4-2〜4-5)
- 2.国土交通省『地質・土質調査成果電子納品要領 解説』(令和8年2月(2026年2月))第4編 地質断面図編 図3-1 地質断面図の構成要素(p.4-5)、3-2 標題(p.4-6)、3-3-1 尺度、3-3-2 目盛線(p.4-6〜4-7)、3-3-5 現況地物、3-3-6 地質情報(p.4-8〜4-9)、3-3-8 地下水位(p.4-9)、3-3-9 岩級区分、3-3-11 物性値(p.4-10)、3-5 凡例(p.4-11)
- 3.国土交通省『地質・土質調査業務共通仕様書(案)』(令和8年3月25日一部改定(2026年))第602条 業務内容(p.35)、第603条 成果物(p.36)
- 4.全国地質調査業協会連合会『ボーリング柱状図作成及びボーリングコア取扱い・保管要領(案)・同解説』(2015年6月)第9編 簡略柱状図 1 簡略柱状図の構成、2 ボーリング孔の属性、3 狭義の簡略柱状図(p.114)

この記事の監修
小林 由快株式会社サファリテック 代表取締役
北海道大学工学部卒。建設コンサルタントの株式会社日水コンで、土木設計と工事監理に従事。リクルートからの業務委託で新規事業開発も経験。現在はサファリテックの代表取締役として、建設・土木向けAIプロダクトの開発を率いている。
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- N値の換算と、地盤定数(γt・c・φ・E)の算出根拠つき出力
- 報告書 第1〜5章のドラフトと、N値分布図・断面図・柱状図綴りの作図
導入企業での実業務時間にもとづく試算では、報告書作成が約50時間から約35時間になります。
地質調査AI CAMEL の詳細