変形係数Eは、地盤に力を加えたときの変形しにくさを表す値で、沈下や水平変位の計算に使います。N値から推定する式としては E = 700N と E0 = 2,800N(いずれも kN/m²)がよく使われますが、この2つは同じものの言い換えではありません。700N は孔内水平載荷試験で測った値を、2,800N は道路橋示方書の地盤反力係数に使う値を推定する式で、組み合わせる換算係数αが違います。
以下では、変形係数とは何か、試験の方法によってEが違う理由、700N と 2,800N の関係、N値から推定してはいけない地盤を、建築基礎構造設計指針と道路橋示方書の原典で確かめながら整理します。内部摩擦角や粘着力も含めた換算の全体像はN値から地盤定数を求める方法で解説しています。
変形係数とは:何を表し、どこに使うか
変形係数は、地盤に加えた力(応力)と、そのときの変形の大きさ(ひずみ)の比です。値が大きいほど変形しにくい地盤です。単位は kN/m² または MN/m² で、1 MN/m² は 1,000 kN/m² にあたります。
建築基礎構造設計指針は、変形係数を地盤の沈下と水平変位の検討に用いる値として扱い、対象となる変位の大きさは数mmから数cm程度としています。道路橋示方書では、杭や直接基礎の計算に使う地盤反力係数を、変形係数から求めます。ほかの地盤定数との関係は地盤定数とはで整理しています。
変形係数の求め方は4つある
| 求め方 | どう測るか | 知っておきたいこと |
|---|---|---|
| 平板載荷試験 | 地表で載荷板に荷重をかけ、沈み込みを測る | 直径300mmの板が多く、その1.5〜2.0倍の深さまでの変形係数しか評価していない |
| 孔内水平載荷試験 | ボーリング孔の壁を水平に押し広げる | 深い層でも、狙った深度で測れる |
| 一軸・三軸圧縮試験 | 採取した試料を室内で圧縮する | 強さの半分の応力のときの値(E50)を読む |
| N値からの推定 | 標準貫入試験のN値に係数を掛ける | 追加の試験が要らない。ばらつきが大きい |
平板載荷試験の評価深さは、日本建築学会『建築基礎構造設計指針』2.7節 p.33 による。
実測の方法のうち、孔内水平載荷試験の手順と使う場面は孔内水平載荷試験(LLT)とは、室内試験は三軸圧縮試験とはで解説しています。
同じ地盤でも、求め方でEの値が違う理由
土は、変形が大きくなるほど軟らかく振る舞います。そのため、どの程度の変形の範囲で測ったかによって、同じ地盤でも変形係数の値が変わります。建築基礎構造設計指針は、一軸・三軸圧縮試験から求めたE50は軸ひずみ0.3〜2%、孔内水平載荷試験のEは軸ひずみ1〜6%の範囲にあると想定され、このひずみの違いから値にも差があるとしています。
同指針は、変形係数は想定するひずみの大きさに合った値を設定する必要があるとしています。N値から推定する式も同じで、どの方法で測ったEに合わせて作られた式なのかを確かめてから使います。
E=700N と E0=2,800N は何が違うのか
E=700N:孔内水平載荷試験の値を推定する式
建築基礎構造設計指針は、孔内水平載荷試験による変形係数をN値から推定する方法として、E = 700N(kN/m²)が広く利用されてきたと紹介しています。そのうえで、土質分類や堆積環境によって相関が異なるという報告があるため、土質区分や堆積環境の影響にも配慮が必要だと注意しています。
E0=2,800N:道路橋示方書の地盤反力係数に使う値
道路橋示方書Ⅳ下部構造編は、地盤反力係数を求める式の中で、変形係数E0に換算係数αを掛けます。αは、E0をどの方法で求めたかで決まります。地震の影響を含まない場合、平板載荷試験の繰返し曲線から求めた値の1/2と、N値から E0 = 2,800N で推定した値はα=1、孔内水平載荷試験と一軸・三軸圧縮試験の値はα=4です。NEXCOの設計要領 第二集も同じ区分を示しています。
道路橋示方書が 700N を示しているわけではありませんが、数字の上では2つの式はつながっています。N値10で計算すると、孔内水平載荷試験の値に相当する 700N は 7,000 kN/m² で、α=4 を掛けると 28,000 になります。2,800N は 28,000 kN/m² で、α=1 を掛けても 28,000 です。地盤反力係数のもとになる α×E0 は、どちらの道筋でも同じ大きさです。
取り違えやすいのは、N値から推定した 2,800N に、孔内水平載荷試験用の α=4 を掛けてしまうことです。地盤反力係数が4倍に過大になり、杭の水平変位を小さく見積もる側に外れます。E0の欄には、値と一緒に求め方を書き添えます。
建築の E=2.8N(MN/m²)は、また別の式
建築基礎構造設計指針は、地下水位より浅い砂質土の沈下量を求めるための変形係数として、沖積砂質土で E = 1.4N、洪積砂質土で E = 2.8N を示しています。単位は MN/m² で、kN/m² に直すと 1,400N と 2,800N です。道路橋示方書の E0 = 2,800N と数字は同じになりますが、沈下量の計算のための式で、想定しているひずみは1%程度です。数字だけを見て同じものと扱わず、出典の式と単位を書き分けます。
N値から推定してはいけない地盤
道路橋示方書Ⅳの解説は、N値が5未満の場合、N値と基礎の載荷試験から得られる地盤反力係数の関係は土質に関わらずばらつきが著しく、N値から変形係数や地盤反力係数を推定することは適切ではないとしています。この場合は、乱れの少ない試料による室内試験や、孔内水平載荷試験、平板載荷試験から変形係数を求めます。
N値が5以上でも、推定値のばらつきは小さくありません。同じN値で報告されている値に約10倍の幅があることは、N値から地盤定数を求める方法の図4で示しています。道路橋示方書も、いくつかの方法で得た変形係数を単に平均せず、方法の特性と設計する基礎との関係を考えて、最も妥当な値を選ぶよう求めています。
岩盤はN値が打ち止めになりやすく、換算N値で扱う別の考え方になります。岩盤の地盤定数をN値から求める方法で解説しています。
報告書には「どの方法のEか」を書く
地盤定数一覧表の変形係数の欄に数値だけを載せると、設計する側はどのαを使えばよいか判断できません。試験名、またはどの指針の推定式によるかと、単位を並べて書いておくと、取り違えを防げます。実測値がある層は、推定値と並べたうえで採用値を決めます。
サファリテックの地質調査AI「CAMEL」は、柱状図PDFからN値を読み取り、設計指針を選んで層ごとの地盤定数(γt・c・φ・E 等)を算出します。どの指針のどの式を使ったかという算出根拠をつけて出すので、変形係数の求め方を一覧表に書き添えられます。地盤定数一覧表はExcelで出力できます。詳しくはサービス資料をご覧ください。
- Q.E=700N と E0=2,800N は、どちらを使えばよいですか?
- A.対象とする構造物の設計基準に合わせます。道路橋の基礎で地盤反力係数を求めるなら、道路橋示方書の E0 = 2,800N を α=1 と組み合わせて使います。E = 700N は建築基礎構造設計指針が紹介している、孔内水平載荷試験の値を推定する式で、道路橋示方書の E0 = 2,800N とは前提が違います。どの式を使い、どのαと組み合わせたかを報告書に明記します。
- Q.変形係数の単位は何ですか?
- A.kN/m² または MN/m² です。1 MN/m² は 1,000 kN/m² です。建築基礎構造設計指針の E = 1.4N・2.8N は MN/m²、E = 700N と道路橋示方書の E0 = 2,800N は kN/m² で示されています。
- Q.孔内水平載荷試験の値に α=4 を掛けるのはなぜですか?
- A.道路橋示方書Ⅳは、地盤反力係数の計算に使う換算係数αを、変形係数を求めた方法ごとに定めています。地震の影響を含まない場合、孔内水平載荷試験と一軸・三軸圧縮試験の値は4、平板載荷試験の繰返し曲線から求めた値の1/2とN値からの E0 = 2,800N は1です。
- Q.N値が小さい地盤でも、変形係数を推定できますか?
- A.道路橋示方書Ⅳの解説は、N値が5未満ではN値と地盤反力係数の関係のばらつきが著しく、N値から変形係数を推定するのは適切ではないとしています。乱れの少ない試料による室内試験や、孔内水平載荷試験、平板載荷試験で求めます。
- Q.一軸・三軸圧縮試験と孔内水平載荷試験で、変形係数が違うのはなぜですか?
- A.想定しているひずみの大きさが違うからです。建築基礎構造設計指針は、E50は軸ひずみ0.3〜2%、孔内水平載荷試験のEは1〜6%の範囲にあると想定され、その違いから値にも差があるとしています。設計で想定するひずみに合った値を選びます。
- Q.CAMELは変形係数も算出できますか?
- A.できます。柱状図から読み取ったN値をもとに、選んだ設計指針の式で層ごとの地盤定数(γt・c・φ・E 等)を算出し、どの式を使ったかという根拠をつけて出します。最終的な採用値は技術者が確認する前提です。
参考文献
- 1.日本建築学会『建築基礎構造設計指針』第3版(2019年11月)2.7節 地盤定数 p.32-33。変形係数の求め方とひずみレベル、式(2.7.6)・(2.7.7)、E=700N(kN/m²)の記述
- 2.日本道路協会『道路橋示方書・同解説 Ⅳ下部構造編』平成29年版(2017年11月)8.5.3 地盤反力係数 式(8.5.2)・(8.5.3)、表-8.5.1、解説 p.187-189(令和7年版では 13.4 表-13.4.1)
- 3.東日本・中日本・西日本高速道路『設計要領 第二集 橋梁建設編』(2016年8月)4-2-2 杭の軸直角方向ばね定数 表4-4-1 変形係数E0とα p.4-39

この記事の監修
小林 由快株式会社サファリテック 代表取締役
北海道大学工学部卒。建設コンサルタントの株式会社日水コンで、土木設計と工事監理に従事。リクルートからの業務委託で新規事業開発も経験。現在はサファリテックの代表取締役として、建設・土木向けAIプロダクトの開発を率いている。
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- 報告書 第1〜5章のドラフトと、N値分布図・断面図・柱状図綴りの作図
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